電車を降り、自宅までは徒歩15分。
気がついたのは駅を出て5分ほど。人通りの多い大通りを外れてあまり人通りのない住宅街の道に入った頃だった。
最初はただ同じ方向に歩いている人がいるな~と思っただけだった。
しかし、靴に石が入ったアオイがそれを出すため靴を脱ごうと足を止めた瞬間、後ろの人物もピタっと歩みを止めた。
偶然かもしれないがなんだか怖くなって靴を脱がず、中にはいった石がゴロゴロするのにも構わず歩を速めると、後ろの人物も歩を速めてくる。
(これ…絶対についてきてる?!)
パニックになるアオイだが、そこでまだ何もないのに大声をあげる勇気は当然ない。
ポケットを探って携帯を取り出すと、ユートに電話。
『どした?アオイ』
いつものように飄々としたユートの声にホッとしつつも、すでにアオイは涙声だ。
「なんか…知らない人につけられてるっぽいよ、ユート。どうしよう!」
と言った瞬間、後ろで気配がして携帯がはじかれる。
「きゃ…」
悲鳴を上げようとした瞬間、何かが口に当てられ、アオイの意識はそのまま途切れた…。
そして寒さで目が覚めた。
目の前の地面は一面黄色。どうやら金雀枝の花がばらまかれていて、それが地面を黄色く染めている。
手足はしばられているらしく動かない。
口もガムテープのような物でふさがれている。
唯一動かせる頭を動かして見回すと遊具の数々。
どうやらここは公園らしい。
その時、何故かハラハラと上から黄色い塊が振って来た。
金雀枝の花びらのようだ。
そこでアオイが上を向くと、丁度目の前の滑り台の上に黒いマントに白い仮面の男が立っているのが見える。
暗い闇に浮かび上がるその表情が読めない不気味な仮面の方も、地面に転がっているアオイも見下ろしていた。
それは丁度さきほどまで図書館で呼んでいたオペラ座の怪人の挿絵のファントムそのものだ。
そしてそのファントムの腕の中には自分と同じ年頃の女の子が抱かれている。
首には縄。そしてその縄の片方はスペリ台の側面の手すりにくくりつけられていた。
(まさか…だよね…)
ひやりと冷たい汗がアオイの額を伝う。
そんなアオイの前でファントムはゆっくりと歩を進め…
ザン!!!
ファントムの腕から投げ出された少女は、声もなく滑り台の手すりから釣り下がった。
「…っ!!!!」
ガムテープに全て吸収された声なき悲鳴を残して、アオイはそのまま気を失った。
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