そして2日後のことである。
「え…離婚?」
帰宅してその話を出した時、嫁は動揺した表情を浮かべた。
とぼけるかどうか迷っている嫁が口を開く前に、ギルベルトは努めて優しい表情を作って、いたわるような声音で続ける。
「好きなヤツいんだろ?
それは良いんだ。別に責めるつもりとかないから安心してくれ。
むしろ結婚した状況が状況だったしな、お前は本当に好きなやつと一緒になった方が良いと思う。
別に有責うんぬん言うつもりは本当にないし、無職のお前に慰謝料とか言うつもりもねえ。
フリッツはどう見ても俺様そっくりで相手も色々複雑な気になるだろうから俺様が引き取って育てるし、お前は今無職で相手の給与で暮らすようになるんだろうから、養育費とかも要らねえよ。
で、フリッツにはなるべく早く母親のいない生活に慣れさせてやりたいんで、養育費を取らない代わりに、離婚成立後は会わないって約束をしてほしい。
このマンションは俺様とお前名義にしてるけど、もし相手が結婚してくれるなら、相手とお前名義にしてやるよ。
そのかわり残ったローンも俺様から相手名義に変わるけどあと5年で終わるし、すでに払い終わってる4000万は返せとは言わねえから、まあお得だろ?
今ある3000万の貯蓄のうち1600万は引っ越し代とかフリッツと住む家の準備とか諸々で現金必要になってくるしもらってくけど、あとの1400万は結婚祝い金として置いてくからローンの足しにでもしてくれ。
ってことで、実質財産分与はお前が4000万分の不動産+貯金1400万で、俺様は1600万の預貯金てことでいいな?
お前の分は俺様の3倍以上になるけど、お前専業だったしな。
すぐには稼げないだろうから、それで良い。
これはあとで互いに揉めないように弁護士挟んで公正証書にしておく。
そんな感じでどうだ?」
嫁は浮気がバレたら当然責められると思っていたのだろう。
驚きすぎてぽかんとした顔をしていたが、ギルベルトがあくまで優しく
「まあ、俺様が本当に困っている時に結婚して助けてもらったしな。
お前が幸せになりたいっていうんなら、今度は俺様が協力してやりたい」
と、続けると、嫁は感動したようだ。
「ギルさん…ごめんなさい。ありがとう」
と涙ながらに声を震わせて礼を言う。
そこでギルベルトはもう一声。
「でな、すぐ開放してやりたいところ申し訳ないんだけど、フリッツと一緒に住むってことになると新居もどこでも良いってわけじゃねえし、ちょっと時間かかるだろ。
家が決まらないとシッターも雇えねえし、次の家が決まるまでの間で良いから、同居は続けて俺様がいない間フリッツの面倒を見てほしい。
最長でも3ヶ月以内には絶対になんとかするから。
で、お前が恋人と会う日は教えてくれ。
俺様がフリッツの面倒を見るために早退するから。
今までは実家に預けてたんだろうけど、今後それもできなくなるし、フリッツも少しずつ俺様と二人きりの時間に慣れさせたいし」
そう言うと、嫁はそれにも同意した。
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