とある白姫の誕生秘話──秘密結婚1


翌日…疲れ過ぎて眠るアーサーを昼過ぎまで待って起こすと、ゆっくりと昼食を摂り、その後に宝飾店へ。

そしてお揃いの指輪を注文。

2週間後に受け取って最初に食事をしたレストランでそれを互いの指にはめて、婚姻届に名を記入。

役所に提出するのは帰ってからということで、そのまま残りのバカンスを楽しんだ。


そして半月後、バカンス終了1日前に書類を役所に提出して、正式に入籍。

まあ元々一緒に暮らしていたので、生活自体が何か変わる事は特になかったりするのだが……



こうして完全にバカンス終了後、会社に戻ると、ちょうどその頃に正式に例の化粧品の宣伝と販売が始まって、色々大騒ぎだ。

ギルベルトは元々社内では有名人ではあったが、さらに有名になって社内だけではなく、街中でも騒がれるようになったし、アーサーにいたってはそれまでは知っているのは一部の人間だけだったのだが、街中でもだが、特に社内で女性に追われる身となった。

そんな状況だから、同性婚してますとは視線が怖すぎてアーサーにはよけいに言えない。
なのでアーサーは普段は指輪をチェーンに通して首から下げているが、ギルベルトは堂々と右手の薬指につけていた。

もちろんそんなギルベルトの指輪に他が気づかないはずもなく、女性陣がすごい勢いで聞いてくるのに、ギルベルトは当たり前に

『おう。バカンス中にな、籍入れたんだ。
でも今ほら、例の化粧品のポスターで色々騒がれてるし、巻き込みたくねえから当分嫁さんは同居せずに遠距離のまま。
写真?いいぜ?今回のバカンス中の彼女な』

と、スマホの写真を自慢げに見せて回る。

照れ顔、笑顔、すまし顔。
そこにはどんな表情をしていても可愛らしい、どこか儚げで透明感のある絶世の美少女が映っている。

悲鳴をあげる女性陣に、歓声をあげる男性陣。

さらさらの光色の髪にいずれも清楚な雰囲気の淡い色合いのワンピースを身につけて映るその美少女がアーサーだと気づく者はいない。

そのことにアーサーはホッとした。

…ショックでへたりこんだり頭を抱えたり、とにかく気落ちする女性陣とは対照的に、尊敬する上司、気の良い同僚が、イケメンの彼に相応しい美少女と結婚したことを、美男美女でお似合いだと祝福する男性陣。

そんな男性陣がぽつりと漏らす。

「結婚式とかは?あげなかったんすか?」


それは素朴な質問だった。

が、その一言が、自分で望んだ事とは言え、これが皆に祝福されて成立した関係ではなく、ひっそりと秘密にしなければならない結婚なのだ…と、アーサーの心にぽつんと影を落とす。

そしてわずかに曇るアーサーの表情を、ギルベルトが見逃すはなかった…が、即対応を取れるわけもなく、手をこまねいているうちにそれは起こったのだった。



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