色々が実に和やかに進んだオンラインゲーム内のギルド仲間への報告会も、以前ログインしていた頃の習慣で、０時を過ぎた頃にお開き。
ああ、楽しかった。
そろそろ寝るか～！となった時、何故かパタンとＰＣを閉じて、当たり前にそのままぱふんとベッドに横たわるアーサーに目が点のギルベルト。
嫌な予感に駆られながらも問いかけると、アーサーの方は当たり前に持参していた自室のベッドの枕をギルベルトの枕に並べて、そこに頭を預けて不思議そうに見あげてくる。
うん…そうだよな。
今まで結構雑魚寝してたよな……
そう考えれば、時間も時間だし、今日このバカンス地にある別荘にきたわけで、これまでなら確かにダラダラとおしゃべりをしながら雑魚寝をしていてもおかしくない状況だ。
それでも……こちらにいる間はお姫さんを満喫したいと言ったギルベルトの要望を叶えてくれようとしているのだろう。
寝る時ですらかぶったままのウィッグ。
さすがに化粧は落として少し濃いグリーンのコンタクトは外しているものの、透明感のある素の淡い瞳の色の方が、なんだか興奮すると言うか…胸が高鳴るというか……
（何か塗ってるわけでもねえのに、なんでこんな唇ピンク色なんだよっ！！）
と、見慣れているはずの顔のパーツ一つ一つですら直視できない。
そこで少し視線を下に反らせたなら、今度は金の絹糸のような髪が白く細い項を彩るのが目に焼き付いて、さらにその下、繊細なレースに埋もれる華奢な肩とか、胸元を飾るリボンをほどいたらそのまま見えてしまうであろう胸元とかを想像すると、なかなか危うい気分になるのは、前にも言った通り。
まずい…どちらにしても無理だとギルベルトは思う。
視線を泳がせるギルベルトに、アーサーの方は何かおかしいと感じたようだ。
「…ギルさん……？」
と、顔を覗き込んでくる。
ふわりと香る薔薇と紅茶の匂い…。
どう考えても同性からする香りじゃない。
いや、同性とか同性じゃないとかこの際関係なくて、つまりは……恋人の香りにひどく欲を煽られた。
思わず身を引くギルベルトに、アーサーは一瞬驚いたように目をみはり…そして何かを察したように傷ついたような表情になった。
何を思われたのかは想像がつく。
だから慌てて、
「違ってっ！！嫌なわけじゃなくて、むしろその逆すぎてっ！！！」
と、首を横に振るが、いつものように頭を撫でたり抱きしめたりと、相手に触れる事ができない。
触れたら暴走を抑えられる自信がない。
だがそんなギルベルトの態度にアーサーは確信してしまったようだ。
「…ごめん……やっぱり…ネットと同じようにはいかないよな…。
ウィッグと服を変えたくらいじゃ、“アリア”にはなれないどころか、リアル成人男がこんな格好しても気持ち悪いだけだよな…」
そう言って溢れかけた涙を見せまいとするかのように、少し俯き加減に身を起して、ギルベルトから離れてベッドから出ようとする。
ダメだ！！
と、ぎりぎり働いている脳が判断する。
ここで行かせたら終わる。
「違ってっ！！！」
と、その肩を抱き寄せた瞬間、ふわりと香る匂いや薄い肩、ふんわりと温かな体温に、ギルベルトの中の何かが決壊した。
──悪いっ！！本っ気で止められねえ！！！
脳内で響き渡る警報。
瓦解した理性の壁を飲み込むように雪崩込んでくる衝動。
それをとうとう抑えるきることが出来ずに、ギルベルトは雄の本能に飲み込まれた。
Before <<< >>> Next (5月6日0時公開予定）
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