とある白姫の誕生秘話──お姫さんと俺様16

──久々に一緒にログインしようぜっ!!

…と、それがギルベルトに言えた精いっぱいだった。


…え?ここまで来てネトゲ??

と、思われるであろうことはわかる。
自分でもそう思う。

でも少なくともディスプレイの向こうとはいえ、他人様の目があれば、さすがに襲わずにすむだろう。
大切な恋人をいきなり襲ってしまうリスクを負うよりは、空気が読めない男と呆れられる方がまだマシだ。

…と、判断しての言葉なのだが、ギルベルトの恋人様は、意外に素直な性格だった。

一瞬びっくりしたようにぽかんとしたが、すぐ

「確かにっ!久々ですし、いきなりギルさんとバカンス来てます♪なんて言ったら、大騒ぎですね」

と、飽くまでお姫さんモードで、しかし楽しげな顔でいそいそと、あとで届けようと思ってアーサーの分もそのままベッドラックに置いておいたノートPCに向かう。


ああ、確かに大騒ぎになるだろう…と、ギルベルトはそこで自分の提案が巻き起こす事態に気づいた。

まあ別に自分が“お姫さん”を狙っている輩から敵対心をビシバシ向けられるなんて言うのは、本当に今更なので、全然構わないのだが。

むしろ暴言を吐かれるのも久々で懐かしいくらいだ。

そう考えるとがぜん楽しくなってくる。

「お姫さんと恋人になったぜぇ~!!って自慢すんのも楽しそうだしなっ!!!」
と、ギルベルトも並んで座って、自分のノートPCを開いた。



そして実に数カ月ぶりのアリアのログイン。

ギルドメンバーのログにその名がログインしたという文字が流れると、大騒ぎだ。

『アリアさん!!もう引退しちゃったのかと思いましたっ!!おげんきでしたか?!!』
『アリアさんだーー!!!!』
『おひさしぶりですーー!!!』

ざ~っと流れるギルド会話。

『ギルさん、このところずっと待ってたみたいだから、嬉しいっしょ』
と、ほぼ同時にログインしたギルにかけられる声。

その言葉にアーサーは少し伺うようにギルに視線を向けた。
それに対してはギルは

「ああ、俺様がちゃんと言うから、お姫さんは気にしねえで良いから」
と、声をかける。

そして…爆弾発言をかました。

『実はな、あれは俺様も一緒にログインしなくなると、色々騒がれるかなと思って、ログインして放置ってたわけなんだけどな』

『え??』
『ええっ?!!!』
『どういう意味よっ?!!!』

ギルドメンの反応にニヤニヤとしているギルをアーサーは、一体どういう風に話を持って行くつもりなんだろうか……とばかりに不思議そうに見あげた。



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