…と、それがギルベルトに言えた精いっぱいだった。
と、思われるであろうことはわかる。
自分でもそう思う。
でも少なくともディスプレイの向こうとはいえ、他人様の目があれば、さすがに襲わずにすむだろう。
大切な恋人をいきなり襲ってしまうリスクを負うよりは、空気が読めない男と呆れられる方がまだマシだ。
…と、判断しての言葉なのだが、ギルベルトの恋人様は、意外に素直な性格だった。
一瞬びっくりしたようにぽかんとしたが、すぐ
「確かにっ!久々ですし、いきなりギルさんとバカンス来てます♪なんて言ったら、大騒ぎですね」
と、飽くまでお姫さんモードで、しかし楽しげな顔でいそいそと、あとで届けようと思ってアーサーの分もそのままベッドラックに置いておいたノートPCに向かう。
ああ、確かに大騒ぎになるだろう…と、ギルベルトはそこで自分の提案が巻き起こす事態に気づいた。
まあ別に自分が“お姫さん”を狙っている輩から敵対心をビシバシ向けられるなんて言うのは、本当に今更なので、全然構わないのだが。
むしろ暴言を吐かれるのも久々で懐かしいくらいだ。
そう考えるとがぜん楽しくなってくる。
「お姫さんと恋人になったぜぇ~!!って自慢すんのも楽しそうだしなっ!!!」
と、ギルベルトも並んで座って、自分のノートPCを開いた。
そして実に数カ月ぶりのアリアのログイン。
ギルドメンバーのログにその名がログインしたという文字が流れると、大騒ぎだ。
『アリアさん!!もう引退しちゃったのかと思いましたっ!!おげんきでしたか?!!』
『アリアさんだーー!!!!』
『おひさしぶりですーー!!!』
ざ~っと流れるギルド会話。
『ギルさん、このところずっと待ってたみたいだから、嬉しいっしょ』
と、ほぼ同時にログインしたギルにかけられる声。
その言葉にアーサーは少し伺うようにギルに視線を向けた。
それに対してはギルは
「ああ、俺様がちゃんと言うから、お姫さんは気にしねえで良いから」
と、声をかける。
そして…爆弾発言をかました。
『実はな、あれは俺様も一緒にログインしなくなると、色々騒がれるかなと思って、ログインして放置ってたわけなんだけどな』
『え??』
『ええっ?!!!』
『どういう意味よっ?!!!』
ギルドメンの反応にニヤニヤとしているギルをアーサーは、一体どういう風に話を持って行くつもりなんだろうか……とばかりに不思議そうに見あげた。
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