とある白姫の誕生秘話──お姫さんと俺様15

こうして風呂をなんとか切り抜け、夜。

自分で希望したものの、こういう場所で改めてお姫さんモードのアーサーといると、色々と危険な事がわかった。

お姫さんと過ごしたいという気持ちはもちろん今でもたぶんにあるのだが、アーサーといた時の距離感だと、恋人として意識してしまったというのもあって、自分の暴走が怖い。

ずっと抑え続けすぎた雄の本能の前には後天的に鍛えた理性はあまりに脆弱だ。

自分自身が描いて準備した“お姫さんとの幸せバカンス生活”が、皮肉な事にどんどん自分を追い詰めていく。

そもそもがアーサーとは最初は恋情ではなく庇護欲だったから極力距離を近くしていたので、“恋人”となってしまうとその距離感で清い関係を保つのが難しいのだ。

DTを守っていたとはいえ、別にそういう事に興味がないわけじゃない。
いや、むしろ経験者よりも、今まで抑えていただけに、そう言う事に貪欲だと思う。

これは…早々にプロポーズ、入籍まで持って行かないと身が持たない。
とにかく明日は店が開き次第、宝飾店にGO!だ。


そんな事を考えつつ、寝るには早いしどうしようか…と思っていると、トントン、と控えめなノックの音。

「どうぞ?」
と、言いつつも、一応立ち上がってドアを開けると、眩暈…。


うん…俺様が馬鹿だったよな……自分で自分追い詰めたよな、こりゃ…

…と、これをノリノリで用意していた頃の自分を殴り倒したい気分になった。



自分好みの真っ白なレースをふんだんに使用した清楚なネグリジェ…。
露出は少ないのだが、胸元に結ばれた細いリボンをしゅるりとほどけば、少し前がはだけてしまう。

もちろん几帳面なアーサーの事なので、その辺はちゃんと結ばれてはいるのだが、妄想…そう、DTの妄想を刺激するのだ。

その上にもきっちりと上着を羽織ってはいるのだが、それも何しろ夏と言うこともあり、薄いレースのカーディガンで、乱暴に扱えば簡単にビリビリと裂けてしまうようなものだ。

いや…乱暴になんかしねえけどっ!しねえけどなっ?!!

と、その考えにも誰にともなく脳内で言い訳。


色々テンパっているギルベルトに、アーサーは飽くまでお姫さんモードを崩さない敬語で、そのくせ

「まだ寝るには早いし、せっかくだから明日からの予定とか、色々おしゃべりしませんか?」
と、部下で愛息子だった頃のままの無防備さの提案をしてきて、ギルベルトは泣きそうになった。



きちんと籍を入れるまでは一定の距離感を保ちたい…
だが、拒絶している感を与えたくない。

色々がクルクル回っている間に、アーサーはいつもの感覚で

「お邪魔しま~す」
と当たり前に部屋に入り、当たり前にベッドの上へ。

据え膳……と一瞬そんな言葉が脳裏をよぎるが、たぶん本当にこれまでの親子か兄弟のような関係の延長線上の感覚による行動なのだろうと思ったら、絶対に手を出せない。

入籍をして、きちんとそういう関係なのだと相手が認識しての行動出ない限りは、手を出してはいけない。

さあ、一難去ってまた一難。
この苦境をどう乗り越えようか…

ギルベルトは内心頭を抱えながら、必死に打開策を探るべく脳内をフル回転させるのだった。




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