とある白姫の誕生秘話──お姫さんと俺様14

ネットも入れれば交際期間3年弱。

こちらで指輪を買ってプロポーズ。
そしてそのままできれば正式に籍を入れる…

そんな完璧すぎる計画は、滞りなく実行されねばならない。

…そう、思っていたのだが、レストランから別荘に帰宅後、早くも瓦解のピンチに陥る事になった。




「ぎ~るさん、せっかくだし、今日は一緒に入りませんか?」

食事を終えての帰宅後、さあ風呂に入ろうとなった時にそれは訪れた。

二階にある露天風呂。
その方がリゾート気分を味わえるだろうと、ギルベルトはそれをお姫さんことアーサーに譲って、自分は1階の風呂に入ろうと部屋で着替えの準備をしていたのだが、同じくそれもギルベルトが用意した“お姫さん用”のネグリジェその他着替えを持ったお姫さんがギルベルトの部屋を訊ねてきて、そんな恐ろしい事を口にしたのだ。

結婚するまでは清い関係を保つべき

それは実は敬虔にして信心深く育ったギルベルトにとって、当たり前の考えだった。
同性?そんなことは関係ない。
だって、好きな相手なのだ。
自分と同じつくりの身体だったとしても、どうしたって興奮する。

ましてやしつこいようだがギルベルトは知識だけは豊富なDTなのだ。
脳内では愛しい恋人をあれやこれやしたことは数知れず。
最近のおかずは恋人一択という状況で、実際に一糸まとわぬ相手の姿を見て、血迷わないでいられる自信はない。

ということで、

「お姫さん、1人の方がゆっくりできるだろ?
俺様は下の風呂使うから」
と、やんわりと辞退してみたのだが、

「湯船は広いし、大丈夫!
せっかくだし、一緒に海を見ながらお話も楽しいと思いませんか?」

と、実に無邪気にのたまわってくれる。


襲う…これ、絶対に襲っちまうフラグだろ?!

とは言えず、かといってあまりに固辞すれば、それでなくても悲観主義のアーサーを傷つけるだろう。

そうして出て来た苦渋の言い訳

「…ここにいる間はアルトは“お姫さん”だからな。
お姫さんらしく、温泉のマナーとしてはアレなんだが、バスタオル全身に巻いて入ろうな?」

と言うと、アーサーは目を丸くした後、次の瞬間

「色々シチュエーションにこだわるんですね。わかりました。そうします」
と、小さく吹きだした。


ちげえよ、こだわってるのはシチュエーションじゃなくて、良識の方だよ!!

…とは言えなくて、ギルベルトは頷いて、アーサーに先に洗い場を使って露天に入っておくように指示をする。

そう…洗っている間にはだかを見ないですむように……



お・れ・さ・ま・の……ばかやろおぉぉぉーーー!!!!

数十分後、ギルベルトはその時の自分の発言を後悔して頭を抱える事になる。

アーサーが身体を洗い終わって湯船に浸かる後ろ姿を確認した瞬間、嫌な予感はあった。
それでも逃げるわけにもいかず、意を決して洗い場に。

そしてなるべく湯船に目をやらないように身体を洗い、しかし洗い終わったらそこにとどまるわけにもいかず、アーサーが待つ湯船へ。



まるで長い洗い髪をまとめているかのように頭に巻いたタオルの下に、湯で薄桃色に上気した細い項から肩にかけてのライン。
湯からかすかに出る胸までしっかり巻いた白いバスタオル。

それらが立ち込める湯気の中、浮かび上がる様子は、何も身につけていないよりまだ艶めかしい。

腰に巻いたタオルの下でしっかりと立ち上がるギルベルトのギルベルト。

これはまずい…。
すごくまずい。

このまま浴槽に向かったら絶対に暴走する!!


「悪いっ!俺様絶対に早々に入れておかないといけない連絡忘れてたっ!!
ちょっと一本だけメール入れてくるから、もしのぼせるようならあがっててくれっ!!」
と、言うと、追いつめられた感が顔に出ていたのだろう。

よほど大切な連絡だと勘違いしてくれたらしいアーサーが

「そうですか、私の事は気にせず急いで出して着て下さい。
間に合うと良いですね」
と、言ってくれたので、慌てて部屋へと戻った。


そして行く先はトイレ。
何度か抜いて風呂に戻ると、アーサーはさすがに熱くなったのか、湯船のふちに腰をかけて足だけ湯につけて、それでも海や星空といった風景を楽しみながら待っていてくれた。

ギルベルトが近づいていくと

「…間に合いました?」
と、見あげてくるのに、

「…なんとか…な」
と、もう変な気もおきないようにと何度も抜いてきたのでさすがにぐったりして答えると、

「ギルさんがミスって珍しいですね」
と、クスリと漏らす笑み。


微塵も疑っていない様子にホッとしながらも、脱力して湯船のふちに背を預けてはぁ~っとため息をついていると、いい子、いい子とばかりに白い手が伸びてきて頭を撫でてくる感触が心地いい。

そんな中…明日からは風呂の前にはトイレ行くの忘れないようにしないとな…と、ギルベルトは秘かに心のメモ帳にしっかりと暴走しないための対策をメモして行くのだった。




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