とある白姫の誕生秘話──お姫さんと俺様13

道行く人が振り返って行く。

美しければ老若男女ウェルカムと言う古くからの悪友などは、そんな状況にご満悦になる気がするが、ギルベルト自身はそんな人目をひくほどに愛らしい恋人に複雑な気分だ。

なにも、爽やかに見えて実はどす黒いレベルで独占欲の強いもう一人の悪友のように自分以外の目に入れたくないとか、そういう意味合いではなく……いや、それも少しはあるかもしれないが、一番怖いのは、ギルベルトの恋人は普段が男のせいかその手の危機感がなく無防備すぎるので、目を離している間に連れて行かれること。

そう言えばこの手の格好をしている恋人に初めて会った時も、ちょうどそんな愛らしすぎる様子に血迷ったチンピラに拉致されそうになっている時だった。

だから自身はそれほど興味があるわけでもないヌイグルミ店でも片時も離れないように傍らに寄りそう。


そうして時間は常に気にしながらも、楽しげにクマを物色しているお姫さんの笑顔をカメラに収めていく。
もちろんそれは非表示用フォルダ保管用だ。
万が一にもクマからバレたら困る。

その後、店を出て一緒に歩く道々とかレストランでの様子は“見せるようの”フォルダへ。

都会ほど多くはないが、それでも決して少なくはない人ごみで、道行く人がたまに振り返って行くくらい可愛らしい恋人だ。

それを差し置いて自分が取ってかわれるなどと思う女は少ないのではないかという気持ちをギルベルトはさらに強くした。



レストランは海に面した雰囲気のあるレストランで、海が見える窓際の席を予約しておいた。

さきほどの店でお迎えした全長30cmほどのクマを隣の席において、夕陽の沈む海にきらきらした目を向けるお姫さんは可愛い。

バカンス中は基本的にはマーケットで新鮮な海の素材を買って自炊しようとは思っているのだが、ギルベルトの脳内でたてた計画では、このレストランには最低あと1回はくる予定だ。

そう、こちらの宝飾店の場所も調べておいたので、そこで指輪を買って、このレストランで渡そうと思っている。

ギルベルトの思う正式なプロポーズ前の交際期間にはずいぶんと短い気もするのだが、まあ“お姫さんとギル”として一緒にいた期間をいれれば、付き合いはもう実に3年弱になる。

それなら良い長さなんじゃないだろうか…。


だから本当は一刻も早く指輪をゲットしたかったのだが、お姫さんの希望が一番なので、明日以降に持ち越し。

明日はどちらにしてもマーケットで食材を買うので、ゆっくりと色々回る中で寄れば良い。



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