とある白姫の誕生秘話──自覚と決意4


「大切なって言ってもリアルで付き合いはねえんだよ…」

引かれるかな…と思いつつカミングアウトする事にしたギルベルト。
それは一つの選択をする事になる告白だった。

「俺様、ジジイに誘われてネットゲームやってたんだけどな、そこで出会った新人のお姫ちゃん。
真面目で一生懸命で…でもどこか危なっかしくてな。
最終的にゲーム内のグループのボスに粘着されて困っていたのを放っておけなくて、一緒にジジイが新しく作ったグループに移って、そこで何かと面倒みてた。
ネットとリアルは別って主義だったんだけどな、そのお姫さんはその気になれば甘やかしてくれる相手なんか掃いて捨てるくらい出来るのに、甘えず自分で頑張っちまう奴で、リアルはどんな奴とかわからねえのに、老若男女なんでもいいやって、そんな彼女に惹かれちまったわけだ。
でもある日、急に体調悪いって即落ちしてな。
すごく律義な性格してるから、後日連絡くらいはあるかと思ったんだけど、そのまま音沙汰なし。
もしかしたらゲームに飽きただけかもと思いつつも、最後が最後だけに、もしかしてそのまま体調悪化したのかとか、ずっと気になり続けてはいて、アルトと暮らし始めてからも彼女から連絡がないかと思って毎日ログインだけはしてんだけどな。
リアルで楽しくやってんなら良いけど、本当に体調の悪さが続いてて、回復してインして来たら、誰もいないとか寂しいだろうし…とかな…。
まあ…彼女にそういう意味で惹かれてるっていうのは伝えた事なくて、でもいつかリアルでも一緒に居られたらって思った時期もあるんだけど…
今はアルトが大事だ。
いざとなったら優先順位つけねえと守れるものも守れねえしな。
万が一お姫さんが戻って来て、リアルで会えるなんて事になったとしても、お前を優先する。
大丈夫…何か助けの手が必要とかで余裕があれば手を差し伸べる事はあるかもしれねえけど、優先するのはお前だ。
何を差し置いても…一番に守ってやるから…
だから安心しろ」

自分でも整理しきれていなかった心のうちを、話している間に整理した。

いつかお姫さんと一緒に暮らせるような機会が巡って来たとしても、優先するのはアーサーだ。
アーサーが巣立つまでは面倒を見きるし、それでお姫さんとの時期を逸してしまったとしても、それは諦めるしかない。

悲しいがしかたのないことだ。
こんな風に悲しそうに泣く愛し子を放置出来るはずがない。

優先する…と、宣言するギルベルトにアーサーは驚いたように目を見開いて、しかし次の瞬間にまた、悲しそうにポロポロ涙を零し始めた。

言葉を信用されていないのか…?



──大丈夫だ。俺様を信じろ……

そんなアーサーを前に、ギルベルトはそう言う事しかできない。

よもやその涙が不信からではなく、申し訳なさからでたものなどとは、想像もできないままなのだから…



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