とある白姫の誕生秘話──カッコいいと可愛いの撮影会2

あ~ちくしょうっ!可愛いっ!可愛すぎだろっ!!!

今日はポスター撮りだ。

ギルベルトは“カッコいい”をイメージした化粧を施されて、カメラの前に立っている。

話が来た時はどんな格好をさせられるのかと戦々恐々としたものだが、実際には街中にいるイメージということで、プルシアンブルーのタートルに黒のジャケットとジーンズという実にシンプルな格好だ。

もっとも、このあとにはロズプリコラボということもあって、ロズプリのイメージで中世っぽい格好で撮るらしいので、そちらはシンプルにとはいかなさそうではあるが……

まあそれはいい。
自分のことはどうでも良いのだ。
問題は可愛い可愛い愛息子の方である。

元々容赦なく可愛いアーサーに、プロのメークアップアーティストが“可愛い”をイメージした化粧をほどこしたら、もうこれはあり得ないレベルで可愛い。

というか、これ公開したらやばくね?
おっかけだのなんだのを増殖させね?

と、心配になるほどの可愛らしさだ。



淡いグレーのセーラージャケットにパンツが七分丈というだけで可愛らしいのに、ベレー帽はやばいだろっ!!と絶叫したい。
ほんっきで絶叫したい気持ちを抑えるのが大変な訳だが、そんなギルベルトの目の前では、“可愛いもの大好き”な幼馴染が絶叫しつつ、その可愛さに転げまわっている。


まあティーンズにしか見えないのだが、百歩譲って、世界で一番可愛い成人男性だ。
それは断言できる。


はしゃいでいるエリザに若干怯えている様子なのを見ると、ここで自分も同じ反応をしたら怯えられるかも…と、ギルベルトは根性で平静を装いながら、アーサーの可愛らしさにもはや正気を失っている幼馴染から、アーサーをかばってやると、にじみかけた涙をハンカチで吸い取ってやった。


こうしてなんとか現代の街中版の写真は撮り終わったのだが、中世版はさらにやばかった。
フリルがたっぷりの衣装を着た姿は、もはや太すぎる眉がなければ性別がわからない。

やばい…可愛すぎてやばい…という言葉しか出てこない。
語彙力が宇宙の彼方にすっ飛んでしまうレベルの可愛らしさである。

世の中、このレベルで可愛らしい容姿の人間が存在するんだな…と、感心しつつも、おそらくこの先絶対に現れるであろうおっかけから守ってやらねば…と、ギルベルトは決意を新たにした。



そんな事を考えているとふとお姫さんを思い出す。
あれからログインしてこないのだが、どうしているのだろうか……

最初の頃こそ何か病状が重いのか?と心配もしたものの、そのわりにはリアル友人となったらしいミアは普通にログインしていて変わった様子もない。

曲がりなりにもあんなに可愛らしいお姫さんに何かあったのなら、ミアだって沈み込むなりログイン頻度が減るなり、何か変化があるだろうし、そう考えると、体調を崩してゲームから離れている間に、他に興味が移ってしまった可能性が高いと思う。

何も言ってもらえなかった…と思えば悲しいし寂しい。
が、ギルベルトだって惰性でログインだけはしているものの何をするでもなく放置して、日々アーサーの世話に勤しんでいるのだから、言えた義理ではないのだ。

元々はアーサーはいずれ社会人として慣れてきて好きな相手でも出来れば自分の手から巣立ってしまうのだろうと思いながら家に引き取ったわけなのだが、現金なもので、お姫さんとの縁が切れてしまったと思うと、手放すのが嫌になる。

そんな気持ちを抱えた状態での撮影で、こんな幼げな姿を見せられてしまうと、余計に気持ちが募って、本来は後押しをしてやらねばならない巣立ちの時を少しでも遅らせるには…と思い始めてしまっている自分に、ギルベルトは苦いため息をついたのであった。



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