とある白姫の誕生秘話──胃痙攣を起こして病院に担ぎ込まれた結果2

こうして押し切られた形で始まる事になった同居生活。

まあ、別に課長補佐との同居は嫌じゃない。
彼はとても気さくで面倒見が良い好人物なので、一緒に居ると心地良いし、上司とずっと一緒という形にはなるが、全く気づまりな感じはない。

というか…家賃タダでバストイレは共有だが個室付き、食事も提供される、大勢の社員の憧れの的の課長補佐との同居なんて代わりたい相手なんて山といるはずだ。
嫌だなんて言ったらバチがあたる。

そう言えば、この同居の遠因の一つにはなったであろう学生時代から続く変態電話からも解放されることになるだろう。

良い事づくしだ。


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胃痙攣の原因になった例の件を除いたら…だが……

そう、自分がオンラインゲームで課長補佐のキャラであるギルと仲良くしていた少女キャラのアリアであるという事がバレたらまずい……



「大丈夫か?疲れたら良いからソファで休んでろよ?」
と、自らは忙しく立ち働きながら言う上司。
そんな姿勢は仕事と同様らしい。

「大丈夫ですよ。服片付けてるだけですし」
と言えば、
「無理してまた病院に担ぎ込ませるなよ」
と、くしゃりと頭を撫でてくる。

全くいつのことを言っているんだ。
胃痙攣の時のことなら、もう数週間も前のことだ…と、思いながらも、そんな風に気遣われるのが嬉しい。

まだ片付かない家の中で足元の箱に少し足を取られて転びかけただけなのに、当たり前に片手で軽々支えられて、

「良いから休んでろ。
俺様は元々いつでもこっちに送れるように荷造りはしておいたけど、お前は昨日したんだろ?
自分で自覚がないだけで、疲れてんだよ。
俺様が側に居て過労で体調崩させるなんてことさせる気はねえからな」
と、有無を言わせずソファに誘導される。

甘やかされている…と、思うものの、それがまた嬉しいのだから、困ったものだ。


ソファに座ると、いつも一緒に寝ているため自宅から持って来たティディを抱きしめて、色々な分野の大量の本を軽々と運ぶ課長補佐の筋肉質な腕や背中を眺める。

特別に鍛えようとしていないというのもあるが、筋肉もぜい肉もつかない貧相な自分の身体とは随分と違う男らしい体格で羨ましい。


とりあえず課長補佐は荷ほどきをしていなかっただけで荷物を運びこむだけは運び込んで、休暇を取って荷ほどきをしようと思っていたらしく、荷ほどきをすませてしまえばほぼ自身の引っ越しは完了ということで、すぐ生活ができる状態になっている。

一方でアーサーは急だったので、着替えや洗面用具など、すぐ必要なものだけをとりあえずまとめて課長補佐の車で運んでもらい、残りは明日以降にまとめて荷造りして郵送する予定だ。

そう…オンラインゲームをやっていたPCも……



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