とある白姫の誕生秘話──愛息子の平和は俺様が守る2

久々にベッドの中に自分以外の体温。
腕の中に抱き込んでいるので、ちょうど鼻先にふわふわの金色の髪が当たって少しくすぐったい。
ギルベルトはそれでも体勢を変える気にはならなかった。


何故だか花の匂いのする細い身体。
こんな風に手の中に抱え込んだ何かを外敵から守ってやるのだと思ったのは、小さな頃のルート以来だろうか…

早くに交通事故で両親が亡くなったのは、ギルベルトが9歳で、弟のルートはまだ3歳。
叔父に引き取られる事が決まるまでは、もしかしたら離れ離れにどこかに引き取られるかもという話もあって、涙で頬を濡らして泣き疲れて眠ってしまったルートをこんな風に抱きしめながら、親が亡くなった事を悲しむ余裕もなく、とにかくルートを守らなければと悲壮な気持ちで思ったものだった。

あの時と比べれば、ギルベルトの方にはとてつもなく余裕があるわけなのだが、守る相手の方の状況はより深刻だ。

ストーカーの方はネット上で、アカウントを削除した事で縁が切れたらしいが、電話は現在進行形。
もっと言うなら、ネット上のストーカーがなんらかの方法でアーサーの電話番号を調べ上げてかけているという可能性すらある。

そうだとしたら住所だって知られている可能性もあるし、とても危険な状態だ。

例え性別が男だとしてもこれだけ愛らしいのだ。
良からぬ輩に狙われているという可能性は十分ありうる。

そんな事を考えつつ、人肌の温かさにギルベルト自身も訪れて来た眠気に逆らわずに意識を手放した。



翌朝4時。
たいていはこの時間に起きてランニングや鍛錬をするので、もう習慣で目が覚める。

いつもの時間…だが、いつもと違うぬくもり。

ギルベルトの懐に潜り込むようにしている小さな頭が覗いている。

こうして陽の光の中であらためて見ると、ぶかぶかのギルベルトのパジャマを着て眠るアーサーは本当に子どものように幼く見える。
頭の大きさに対して額が広めで目が大きいせいだろうか…。

ああ…本当に可愛いなぁと、子ども好きのギルベルトとしては思う。

いくら見ていても飽きないレベルで可愛いので、起きあがったら病人を起こしてしまうから…と、心の中で言い訳をして、そのまま随分長い間寝顔を堪能していると、寒かったのか怖かったのか、腕の中でアーサーがすりり…と、ギルベルトの胸元にさらに擦り寄って来て、まるで眠たい時の赤ん坊のようにその黄色い小さな頭をこしこしと擦りつけてくる。

ああぁぁあああーーーー!!!!

その行動のあまりの可愛らしさに変な声が出そうになった。


(アルト、可愛すぎだろぉぉおお~~!!!!)

と、心の中で大絶叫しつつも、大声を出すと起こしてしまいそうなので、言葉は飲み込んで、その代わりにそっとその頭をなでると、今度はなんと、眠ったままふにゃりと笑みを浮かべる。

………
………
………死ぬかと思った。

人間…可愛すぎるものを見ても死ぬことはある。
きっとある。

よく本田がキュン死にするという言葉を使うが、まさにそれだ。

これはやばい。まじでやばい。
心臓が爆発するかもしれない…

本当に心臓がすごい勢いでドキドキしてきたので、生命維持を優先させてもらうことにして、ギルベルトは朝食を作りがてら起きることにした。


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2 件のコメント :

  1. 「とある白姫の〜……」を拝読致しました。
    とても素敵で、また好みでした。続きも楽しみにしております。

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    1. コメントありがとうございます。
      白姫も随分長くなってきましたが、最後までお付き合い頂けると嬉しいです(*゜―゜)ノ

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