とある白姫の誕生秘話──乙女達の座談会3

「あ、それなら、うちにええ考えがあるわ!」
と、声があがるたび、すでに恐ろしい予感しかしなくて、震える茂部太郎。

手をあげたのは品の良さそうなお嬢さん。
彼女はいわゆるアヒル口ににんまりと笑みを浮かべてバッグの中から化粧品の数々を取りだした。

「あんな、うちの会社の化粧品、ロズプリの役者さん達にひいきにしてもらっとるやん?
でもちょお事業展開したいねん。
てことで、今企画しとる、役者さんだけやなくて、一般の男性向けの化粧品。
他の男性向けと差別化やないけど、どうせなら、ちょっと違う方向性で、コンセプトは『カッコいいのは当たり前、美人、可愛いも演じられる男へ』って、ロズプリ感を出してみたいんや。
必要なら従兄弟のよしみでフェリちゃんまでなら協力してもらえるけど、エリザんとこで扱ってもらえへん?
ずうっとお馴染みさんとしかやりとりしてへんから、宣伝とか売り込みの蓄積がうちにはないんよ。
で、役者さんやない人にもってことで、ギルさんや新人ちゃんにもモニターとして使うてもろて、なんやったら、2人を宣伝にてセットで写真とか撮らせてもろたらええやん?
そしたら、より一緒におる時間とか長くなるし、距離も縮まるんちゃう?」

「あ~~!!!それいいっ!!!
腐女子がだいぶ公けになってきたみたいに、最近は男の娘だってわりあいとオープンになってきたしね。
そのサンプルと資料もらってっていい?
明日部長に言ってみるっ!」

「ええよ~。というか、宜しくお願いします~」


一応会話をひたすらメモる茂部太郎。
最初はメモする必要があるのか?と思っていた女性陣の恐ろしい趣味の話も、後半には仕事に繋がっていて驚いた。

なるほど、エリザの他には真似出来ない仕事というのは、こういう風に持ちあがってくるのだろう。

「ん~~、じゃ、ある程度型が決まったら情報宜しく!
うちの大学の情報通を自称するあたりに、まだ企画段階で他には秘密だけど…って流せば、勝手に周り中から拡散してくれるネ」

「わ~、いつも梅ちゃん助かるわ~~」

「それでは…私はロズプリ後援会の奥様達にそんな企画案が出ていると言うお話でもしましょうね。
ワールド商事の大株主の奥様もいらっしゃいますし、雑誌社やテレビ局に繋がりのある奥様達もいらっしゃいますから。
出来れば…推しを思わせる何かの要素を入れて頂けると、宣伝だけではなく、わたくし自身も大量購入して推しの化粧品で部屋を埋め尽くして推しを想いたいのだけれど…」

「貴重なご意見ありがとうございますっ!検討しますっ!!」

「あ~、桜様、それやったら、ヴァルガスのイーストの家のフェリちゃん、メディア露出させたることって可能です?
舞台一本やと色々ロヴィやら本家やらあって辛いんで、出来ればテレビ方面行きたいらしいんですけど…」

「フェリちゃんが?
あ~、もちろんよ。
そうよねぇ…あの子なまじ華があって才能もあるから、上をたてて才能を抑えなきゃならないのは辛いわよねぇ。
わたくしね、あの子が演じたメラニーがとても好きだったわ。
本当に愛らしくて愛らしくて…」


趣味とビジネスが交差して、どんどん仕事が生まれて行く不思議な空間。

とりあえず少なくとも自社的には男性用化粧品の仕事が持ち上がったらしい。

茂部太郎…慌ただしい日々の始まりである。



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