とある白姫の誕生秘話──給料の3カ月分と言わずとも6

世の中にはなんともすごい偶然もあるものだ…と、ギルベルトの話を聞いて、本田は思った。
まさに事実は小説より奇なり…である。

まあ本田に言わせれば、ギルベルトの高すぎるスペック自体が充分非現実的なレベルではあるのだが。


それよりまるで小説のようだと思ったのが、あり得ないレベルのイケメンで、文武両道、一説によると、楽器も華麗に扱い、料理もできる、もちろん当然仕事も出来て高収入という、絵に描いたようなリア充スペックなギルベルトが、実はほぼ女性との交際経験がないと言うことだ。


(好きな相手なんか出来たら、どうせ一発で落とせるんでしょっ。
わかってますよ、このコミュ力Maxのリア充がっ!!)
などとこれまでは思っていたが、一気に親しみが増してきた。


そう思って振り返ってみれば、本田がこの部署に転属になって2年たつが、女性陣達の果敢なアピールをスルリスルリと交わし続けることはあっても、ギルベルトが特定の女性と親しくしているのを見かけた事はない。


ここでギルベルトが悩んでいる相手が普通の女性だったら、

──ギルベルト君、君も魔法使いになりましょうっ!!

と、ぜひ30まで清らかな身で居ることを勧めるところだが、こと、相手があの少女キャラの中の人だと思えば、結婚式に呼ばれて

2人が親しくなったきっかけは、新婦がネカマ戦士に粘着されたのを新郎が助けたことでした』

と、スピーチをしたいのがオタク心というものだ。

もとい、いくらでも遊べるスペックがあって機会も向こうからゴロゴロと転がって来続けるにも関わらず、本当に好きな相手以外とは…と、真面目に生きて来た青年の一途な恋を応援したくなる。


まあ、自分自身も女性とお付き合いをしたことなどないので、出来る事などかぎられているわけだが、一応、ゲーム内ではアリアの事も知っていれば、リアルでアリアといたというミアは、元々はゲーム内の本田のキャラ、ノアノアの知り合いである。

彼女を通して何か協力出来る事もあろうと、

「で?ギルベルト君はどこまで望んでいるんです?
彼女とまずどうしたいんです?」
と、訊ねると、返って来た言葉は

結婚したい

「は??」

「OKもらえるなら、給料の3カ月分の指輪くらいはすぐ買える貯蓄はあるし…。
式は…どのくらいすんだろうな。
でも暴落する前にスパッとやめたネット通貨と、現在進行形で運用してる株の資産で、今1人で暮らしてるマンションから会社に来るのに使ってる路線で一軒家買えるくらいの金はあるから、お姫さんが結婚してくれるっつ~んなら、有給取って一緒に家みにいって、即金で買う」


…こ…このおとこはぁぁ~~~!!!!

スペックが凄まじく高い上に給与以外に凄まじい収入があるのに、このアンバランスな童貞くささはなんなんだろうか…。

本田は呆れかえりながらも

「とりあえず…結婚より先に、お付き合いですよね?」
と、訂正すれば、ギルベルトは

「そうだな、婚約期間は大事だよな。
まず2,3年くらいはデートを重ねて、指輪を持ってプロポーズ。
それからさらに1年くらいは婚約期間を置いて、結婚か」
と、気真面目に頷く。

「いやいや、そこまで時間おく必要はないですけど。
プロポーズまでは早い方はもっと早いとは思いますけどね。
結婚考える前にまずお付き合いですよね」

思わず漏れる苦笑。
本来なら敵なはずのイケメンも、ここまで不器用だと敵意もわかない。
むしろ孫を見守る祖父くらいの気分で

「そうですね。
とりあえずいきなりネットの方からリアルに働きかけると警戒されそうですし、弟さんの方から情報を収集しつつ、作戦を練るのが良さそうですね」

と、本田はアドバイスをして、そろそろ昼休みも終わるので、その話はいったん切り上げた。


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