アーサーは落ちつかない気持ちで待ち合わせの場所に立っている。
そう、今日はミアとの御対面の日である。
ついでにこのキャラでゲームを始めた理由すらも言ってしまった。
ギルにすら言っていない諸々。
何故言ってしまったのかと言えば、ミアが最初から友好的なだけではなく、他に見せない素の面をアリアにだけは見せてくれていたから…かもしれない。
それでも秘密の度合いが違う。
もしかしたら引かれるかも?と思っていたら、ミアは本当に何の問題もないかのように、
『ああ、そうだったんですね。
ミアは全然構いませんよ?
さきほど言った通り、危ないかどうかって、性別がどうというより人格の問題ですから。
アリアちゃん、粘着とかするよりされそうなタイプの気がしますし、そういう意味ではぜんっぜん危険を感じません。
ミア、これでもお仕事も人の目とか関係するものなので、他人を見る目って結構あると自負してますし。
アリアちゃん、素でそういう性格で男性だと、リアル生きにくそうな気はしますけどね』
と、するっと言ってくれてしまう。
異性でも良い…。
ゲームをやっている時間以外にも友達が欲しい。
実母が小学生の時に亡くなって、しばらくは仕事が忙しい父の家で家政婦さんに世話をされながら暮らしていたが、それも高校になってすぐに父の再婚により終わって、それからはマンションで1人暮らしをしている。
その上で友人の1人もいないのだから、ゲーム内以外では本当に一人ぼっちなのだ。
かといって…ギル達にカミングアウトをして会おうとは言えなかった。
というか、そういう発想もなかった。
だって、彼らにとっては自分は可愛い女の子であり“お姫さん”なのだ。
彼らが一緒にいたいのは“アリア”であって、“アーサー”ではない。
そんな中でミアは“アーサー”でも構わないからリアルでも友人になりたいと言ってくれたのだ。
ずっと友人を切望していたアーサーが断れるはずがない。
そうして大学を無事出来て内定をもらった会社に入社するまでの春休み。
アーサーはミアに会う約束をして、待ち合わせ場所に指定されたとある住宅地の図書館の前で待っている。
(これ…いたずらとかだったら嫌だな……)
幼い頃の母の事があって、アーサーは知らない女性は少し怖い。
もちろんミアのことは好きだし疑っているわけではないが、なにぶんネット上の付き合いだ。
当然アーサーがそうであるように、ミアだってネットのままのミアではない。
アーサーに悪意を持っているとは思わないが、もしかしたらリアルの自分を見て嫌になられる可能性だってあるのだ…。
そんな事を思いながら、人通りが少ないのでまずわかるとは思うが、一応目印にと手にしたファッション雑誌を抱えながら待っていると、すぅ~っと静かに停まる高級車。
(…え?)
と、思っていると後部座席の窓が開き、中から目を見張るほどの美少女がこちらに向かって手を振って微笑む。
「アリアちゃん、お待たせっ!
移動するから乗って?」
ふわふわの茶色の髪に笑みを描いた飛び色の瞳。
首元と袖口にふわふわのフェイクファーがついた淡いピンク色の可愛いコートがよく似合っていて、なんだか砂糖菓子みたいに甘やかで可愛らしい
まさかのまさか!
ミアさんは本当に本当のお姫様だった?!
ミアはドアを開けて、そんな風に驚きのあまり固まるアーサーの腕を取ると車に促した。
0 件のコメント :
コメントを投稿