とある白姫の誕生秘話──目指せっ!ネカマの星☆!!1

きっかけは些細な事だったと思う。


メインのクラスのレベルはそれぞれマックスになって、3人はそれでも一緒に経験値を能力値に振り分けるための経験値稼ぎ、オーバーポイントのための狩りをせっせせっせとやっていたが、ノアノアは相変わらずヘルプで呼ばれる事が多い。
なので、ギルベルトは必然的にお姫さんと2人でクエストなどをする機会が増えた。

しかし竜騎士はアタッカーなのでタゲを取れるアビリティは少なく、タゲを取る手段は攻撃以外ほぼない。

なのでメインクラスの半分のレベルにはなるが、別クラスのアビリティを使えるようになるサブクラスに敵のターゲットを自分に向けるプロボがある戦士をつけるのだが、それで攻撃を受け続けると、元々の防御が高い戦士と違ってダメージを負いすぎる。

それならいっそ、魔術師の魔法にあたる忍術を多用してタゲを取れて、回避も忍術の一つの幻術であげられる忍者をサブクラスにした方が良いかもしれない…。

ということで、お姫さんと2人で行動する時用にレベル20くらいで放置していた忍者をサブクラス用に35まで上げようと思い立った。

が、問題はその間のお姫さんである。

本人は釣りでも、低難易度のクエストでも、なんでもして時間を潰しているからと言うが、とにかく粘着されやすいキャラなだけに心配だ。

それを指摘すると、アリアはさらりと髪を揺らしながら小首をかしげた。

「ん~~、なんで私粘着されるんでしょう?
ケイトさんの時で学習したので、ギルド会話以外ではハーブティの話もバスソルトや刺繍の話もしてないんですけど…普通に野良の方に言い寄られるのは何故でしょう?
女性キャラって少なくはないですよね?
他の方はどうなさってるんでしょうね?」

不思議そうに聞かれて、ギルベルトは改めて考えて見る。


確かにそうだ。
ネットゲームでは異性である女性キャラを演じる男、いわゆるネカマも多い。
だが、ギルベルトもそうだが、お姫さんを目の前にしたプレイヤーはおそらく皆、彼女はリアル女性だと思っているだろう。
だから粘着をする。

「ん~~なんでだろうなぁ…。
なんかお姫さん女っぽいっつ~か…
あ~。過剰に女っぽさを演出しねえからかも」

「…過剰に?」

「そそ。男が女演じる場合って、漫画とかの女の子っぽさをすげえデフォルメしたキャラを参考にする事が多いから、ベタベタと女の子っぽいキャラはなんとなくネカマな感じすんのかもな。
お姫さん、ギルドでの話題はおいておいて、野良とかでは普通に敬語で、~なのぉ、とか、そういうベタっとした言葉使わねえし、自分の事、アリアはぁ~とか、名前で呼ばねえし、普通に自分で出来る事は、できな~い(;o;)とか言って人にやってもらおうとせず、ちゃっちゃと自分でやろうとするしな。
そういうとこが返って女っぽい感じか」

「なるほど…φ(..)メモメモ
つまり…ネカマさんぽくすれば良いと言う事ですねっ!
わかりましたっ!!
ギルさんがサブクラスのレベル上げしている間、私、もう1つサブキャラを作って、そちらでネカマプレイしてきますっ!!」

はぁああ???!!!

「そうだっ!どうせなら、もしどなたかに声かけられることがあったら『あたし、ネカマの星めざしてるんでぇ~す☆』とか言っちゃえば完璧ですよねっ!!」


なんだか変なスイッチが入ってしまったらしいお姫さんに、ギルベルトは唖然として言葉を失う。

そうか?そういう問題なのか??
本当に大丈夫なのかっ?!!!!

と、ギルベルトがグルグルと色々考えている間も、お姫さんは

「じゃ、服装は…機能性よりも、なるべく可愛く見える組み合わせですよねっ!
フェイスはこのフェイスで、髪はどうしよっかなぁ…
いっそのことピンクにしてみるとか…」

とすでにサブキャラのキャラメイクの構想に入っている。


今でさえ可愛いお姫さんが本気で“可愛い”を目指したらどうなるんだろうか…
見て見たい気もするが、見るのが怖い気も……

いや、きっと見る気はなくても絶対にまた巻き込まれる気がする…。

そんな予想出来すぎるくらい出来てしまう未来に頭を抱えながら、ギルベルトは自身の忍者上げの支度に没頭するのだった。



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とある白姫の誕生秘話始めから





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