…と、お姫さんが言った。…それはそれは楽しそうに…。
お姫さんとの会話には毎日と言って良いほど彼女の名前が出てくるようになった。
元々はお姫さんにちょっかいをかけて来そうな雰囲気の髭のナイトに現在進行形で粘着されている相手と言う事で、彼が粘着気質だと言う事に危機感を持たないお姫さんに危機感を持ってもらおうと経験談を聞かせるために紹介して貰った相手だが、ミイラ取りが…というのとは若干違うが、そんな感じで今度はその姫キャラにお姫さんを取られつつある。
少なくとも聞いている分にはケイトの時とは違って、多くはなったとは言ってもまだまだ少ない女の子のプレイヤー同士のおしゃべりが楽しいのだろうという感じではある。
それまで若干危なっかしいものの丁寧でテンションもそう高めではなかったお姫さんのキャピキャピ度が、彼女との付き合いが始まってから上がった気がする。
まあ、それはそれで愛らしいので良いのだが……
口を開けば
「ミアさんがねっ…」
「ミアさんのねっ…」
「なんとミアさんはねっ…」
と言うのが、少しさびしいというか……ああ、もうはっきり言ってしまおう。
自分はその姫キャラに嫉妬している。
たぶん違う。
その姫キャラは今までのお姫さんの粘着とかとは違う。
わかっている。
いわゆる仲良し、親友とかそういう類のモノだ。
それにやきもちを焼くなんて馬鹿げている。
そうは思いつつもモヤモヤしたものを抱えていたところに、冒頭のお姫さんの発言だった。
ナイト三大勢力と言うのは例の姫キャラの一番有力な取り巻きのことだ。
あまりに毎日毎日お姫さんから聞かされて、ギルベルトすらそれを知っている。
それぞれ姫キャラをめぐって争っている3人を一堂に会しようと言うのだから、ギルベルトからすれば悪趣味な催しだ。
それでも噂の3人に会えるということで、お姫さんはすでに同行を了承してきて、今日はレベル上げに行けないからということで、ギルベルトとノアノアに報告をしてきた。
…ということで、今ここ、となっている。
レベル上げは3人とも予定がない時は毎日行っているが、誰かが予定がある時は他の2人はクエストなり金策なりをしているのが常なので問題はない。
行けない日はむしろヘルプを頼まれる事の多いノアノアの方がよくある。
だからそれはいい。
お姫さんからの報告を受けて、ノアノアは紹介者でもあるので、全く気にすることなく
『それは良い経験ですね。いってらっしゃい』
とにこやかに応じるが、ギルはなんと答えて良いか言葉に悩む。
いや、ダメという権利はない。
…ないのだが……
色々がくるくる回る。
出来れば行かせたくない。
それは何故だ?
2人きりではないのだから、別にそういう意味では問題はないだろう。
というか、そういう意味だとしても、自分に止める権利はない。
しかし…と、考え込んでいると
『ギルさん?』
と、お姫さんの少し気遣わしげな問いかけ。
そこでハッとする。
そしてとりあえず自分自身の感情はおいておいて、起こりうる可能性のある心配事を列挙する事にした。
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とある白姫の誕生秘話始めから
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