とある白姫の誕生秘話──ナイト三大勢力1

ミアは完璧に演じられているお姫様だった。
いつでもニコニコ。
誰にでも優しい言葉。
相手に負担をかけすぎない絶妙な頼り方。
その全てが理性と努力の結果の姫らしい。


人によってはそれを裏表があると敬遠するのかもしれないが、アーサーはむしろ自然に与えられたものではなく自身の努力でその座をキープし続けていると知って、余計に彼女に対する好意の念を持った。
大変素晴らしいと思う。

一過性の若さや可愛らしさを消費して甘やかされるのはたやすいかもしれないが、ここまでトップにのぼりつめて、それを長期間キープするとなると、やはり努力なのだ、と、わかった事は大いなる収穫だと思う。


人はただやみくもに努力するだけでは上にはあがれない。
常に周りを見て、譲れる範囲の事ならば周りの要望も汲んで行動した方が、よりよい成果を得られるものなのだ…と、思って折りに触れて彼女に付いて学ぼうと決意した。

ネットでくらい楽をさせてもらいたい…そんな動機で始めたはずだったのだが、いつのまにか努力して学んで…という方向に思い切り急カーブを切っていることに当然気づかぬアーサーである。



そんな風に日々tellでお姫様とのトークを楽しんでいたある日…ミアから珍しく

──アリアちゃん、今日すこし時間取れるます?
と、tell以外のお誘いがあった。

──ええ、なんでしょう?

とりあえず今はミアを見ているのが面白い。
レベル上げに関しては用事がある時は固定の他の2人に言えば、クエストなり金策なりしておいてくれるので、問題なしだ。

なので二つ返事で答えると、ミアからは

──私のナイト三大勢力と会わせておきたいかなぁって思いまして
と、なんとも面白そうなお誘い。

ナイト三大勢力については彼女から聞いて知っている。
彼女いわく、今彼女の取り巻きの中で一番彼女の側にいる3人。

ナイト三大勢力と言っても、1人シーフが混じって入るのだが…まあ、お姫様を守るナイトという意味なのだろう。

噂の3人と会える。
それだけでテンションがあがる。

──今日中に3人ともに?

てっきり順番に会うのかと思っていたら、なんと

──ううん。3人一緒にっ!
と言うではないか。

──え?ええ??ギスギスしないんです??
と驚いてさらに聞くと、

──ふふっ。ミアのお友達が一緒というあたりで、どうなるかなぁと♪
と、どうやらその水面下の火花を楽しむ催しらしい。

うわあ…とは思うモノの、そういう場面の男が取る態度というものには、少し興味がある。
リアルだとまず見る事が出来ない光景だ。
後学のためにもこれを断る理由はない。

誘いに快諾をして、それをギルとノアノアに伝えると、ノアノアは

『それは良い経験ですね。いってらっしゃい』
とにこやかに応じてくれたが、ギルは無言だ。

『ギルさん?』
と、問いかけると、
『…それ…大丈夫なのか?』
と、返ってくる。

『え?』
きょとんとするアリアに、ギルが言う。

『最近、ミアと仲良いみてえだけど、ケイトの二の舞にならないかってのが一点。
あと、そのナイト三大勢力?がお姫さんの粘着になったりしねえのかってのが一点。
最後にミアと仲良くしすぎて、そいつらに嫉妬されないかってのが一点。
以上3点が気になるんだが……』

言われて、おお~!と思う。
ギルは本当に細やかだ。
まあ…それだけ粘着系ではお世話になったからというのはあるのだが…

しかしその心配はないと思う。

『えっと…ミアさんは本当にお姫様で男性キャラにしか興味がなくて、私と一緒にいるのは逆にそういう心配が一切ない相手で、恋バナとか色々女の子がするような話?をしたいだけだということなので…。
実際、私はほぼ彼女の周りの男性陣のお話とかの聞き役なので、ケイトさんの時みたいな事はないと思います。
あと2番目に関しては、ミアさんを日々見ている方々が私ごときに興味をもたれる事はまずありません。
3番目は…ん~~……』

つらつらと並べるアリアに、ギルが大きくため息をつく。

『お姫さん…自分がどれだけ可愛いのか分かってねえだろ。
本当に“ごとき”って奴なら、あんなに粘着現れないからな?』

『でも……』
『…………』
『万が一があったら、いつもギルさんがなんとかしてくれるかな?って』

てへへっと笑うと、ギルは無言。

そんなやりとりをしているうちにノアノアがミアに連絡を取ってくれたらしい。
そして、伝言を伝える。

『ミアさんから──それならアリアさんのナイト様もご一緒にいかがですか?ちょうど6人パーティになれますし♪──と言う事ですよ?』

うあ~うあ~うあ~~!!!
ナイト三大勢力とか他人ごとなら面白いが、自分のナイトと言われると非常に照れる。
…が、確かに知らない相手と会うのにギルが一緒なら安心な気がする。

『…えっと…ギルさん、…だめ…ですか?』
と聞いてみれば、ギルはやれやれと言った風に
『お姫さんの安全にかかわるのにダメとは言えねえだろ。わかった。俺様も同行する』
と、それでもその旨を了承する。

こうしていざナイト三大勢力とご対面をするため、アリアはギルと一緒にミアとの待ち合わせ場所へと足を運んだのだった。



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とある白姫の誕生秘話始めから



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