とある白姫の誕生秘話──お姫様フレンド3


レベル60で着られるようになる各クラス限定の装備はそれぞれのクラス特性を向上させる上に見栄えもそれらしくなるので、ほとんど全員と言って良いほど、プレイヤーたちはそのレベルになるとクラス装備を入手する。

だが、入手と言ってもそれは簡単なものではない。
クラスによって様々ではあるが、共通して言えるのは、事前にそのクエスト用のキーアイテムを入手し、世界各地の決まった場所にある祭壇でそれを使って特別なモンスターを召喚。
そのモンスターを倒して、最終的にクエストを受けたキャラの所まで行って入手するのだ。

もちろんそのモンスターはそのレベルのプレイヤーがソロで倒せる強さではない。
たいていは6人パーティ×3、18人のアライアンスという集団になって、その集団で倒すことになる。

ということでよほど大きくて協力的なギルドにでもはいっていても、たいていはヘルプを数人連れての野良のクラスクエストパーティに入ることになるし、ギルベルトは自身の時はケイトやノアノアなど、当時のギルドでレベルの高いヘルプを何人か頼んだ上で自分がリーダーになってクラスクエストパーティを作ったし、アリアの時にはノアノア他ギルドメン5人と共にヘルプに入って、あとはアリアが野良で集めて来た。

しかし今回のクラスクエストはすごい。
当事者のホワイトメイジのミア以外、全員がヘルプだ。
それどころか、アライアンスの18人に入れないメンバーが、アライアンスのあとに付いて来ている。

以前からノアノアに、ものすごく有名な姫キャラだとは聞いていたが、本当にたいした人気だ。

確かに物腰やマクロなど、完全に男の目を意識して作ったものだなと思うし、実際にそれで沢山の男が寄って来ているわけなのだが、ギルベルトの目から見ると作りすぎだなと感じる。

というか、“うちのお姫さんの方が可愛い!”と思っている。

まあ…お姫さんにこのレベルの数の信奉者と言う名のストーカーが現れたらさすがにしんどいので、そんな事は自分だけがわかっていれば良い事ではあるのだが…

それでなくてもすでに誰にでも親切で物腰も柔らかいお姫さんは人気者なのだ。
これ以上そういう輩が増えるのは自分の精神衛生上も宜しくないと思う。

移動途中、当事者のホワイトメイジ、ミアの姿隠しの魔法のマクロの台詞が可愛いとお姫さんがはしゃいでいるが、ギルベルトに言わせるとそんな事ではしゃいでいるお姫さんの方が可愛い。

というか、ミアのマクロ、アライアンス会話で流しているのだが、その手の魔法は同じパーティ内のメンバーにしかかけられないので、普通に考えればパーティ会話で流せば良いものだ。
それでなくとも18人分の会話ログが流れるアライアンス会話で流されても邪魔なだけだろうと思う。

それを敢えてと言うところが、ああ、アピールをしているんだな、と、効率主義のギルベルトからすると鼻白むところがなきにしもあらず。

もちろん、無邪気に楽しんでいるお姫さんの気持ちに水をさしたくないので指摘も注意もしないわけだが…。


可愛い、可愛いと言ってもあまり反応が芳しくないギルに同調を求めるのは諦めて、お姫さんはギルド会話に切り替えることにしたらしい。

『ノアノアさん!ミアさんてお話されてた通り、本当に可愛らしい方ですねっ!
あの姿隠しのマクロとか、私感動しちゃいましたっ!
本当におとぎ話に出てくるお姫様みたいですよねっ!!』

と、ギルベルトに送っていたtellのテンションそのままに、今度はノアノアに話かける。
するとノアノアは自分で言ってただけにそれを否定することなく

『そうでしょう?』
と、それを肯定したあと、でも、と、今度は話をアリアの方に向けた。

『実は私、ミアさんの方からも同じようなtell頂いてたんですよ』
『同じような?』
『ええ。ミアさんがアリアさんのことすごく愛らしい方だとやっぱりはしゃいでいらっしゃいます』
『ええっ?!!』
『お二人して同じような反応なさっていて面白いです。
ミアさんはああいう方なので、周りを男性が囲みすぎて女性が寄って来られないので、そういうタイプじゃないお友達が欲しかったそうなんです。
良ければフレンド登録して後日お話してみたいそうなんですが、大丈夫ですか?』
『はいっ!ぜひっ!』
『では、そうお伝えしておきますね。
あとでフレ登録飛ばされると思います』
『ありがとうございます♪』

お姫さんに近づきたがるプレイヤー…
ピクリと反応するギルベルト。

何か打とうとキーボードに触れようとしたその瞬間、

──この方は大丈夫ですよ。アリアさんに例の髭の話をしてもらわないといけませんしね。
と、ノアノアからtell

そうだった…元々そのつもりで接触を取らせることになっていたんじゃないか…

はぁ…と、ギルベルトはいったん落ちつこうと大きく息を吐きだした。
お姫さんの事となると、我ながら本当に冷静さを欠いてしまうと、猛省だ。



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