とある白姫の誕生秘話──伝説のストーカー、その名は…2

こうして徒歩で3分ほど。
アクティブなモンスターのただなかに転がる5体の遺体。

それをブラックメイジの引き寄せの呪文で自分達のいる安全な場所に引き寄せる黒のノアノアと、サブクラスをブラックメイジにしているためメインの半分までの黒魔法を使えるアリア。

こうして足元に5体の遺体が転がった時点で、アリアがホワイトメイジに蘇生魔法をかけた。
光に包まれてふわりとおきあがるホワイトメイジ。

本来ならこれで『それではっ!』と去っても良いのだが、蘇生後5分はデスペナルティでHPとMPが10分の1の衰弱状態になっているので、蘇生されたばかりのホワイトメイジはMPが足りなくて蘇生魔法を唱えられない。

「とりあえず次はナイトを起こすか?
そしたらそっちの白とナイト、2人で蘇生したら早いだろ。
ここは一応敵はわかないけど、他のパーティのとばっちりで敵が通る事がないとも言えないし。
俺ら行ったらやばいだろ」

ギルベルトの提案は通りがかりで蘇生を頼まれたパーティとしてはもっともなものだ。
全員を回復するにはそれなりにMP消費もあるので、アリア自身もMP回復に時間を取られるし、それだけこちらの狩りが遅れる。

一応ホワイトメイジを蘇生した時点で最悪全員蘇生の道は開かれたわけだから、そこで衰弱中の危険について気遣うだけ優しいとも言える。

しかし全滅側のパーティの方は無言だ。
それが即ち彼らの言葉にはできない意志表示とも言えた。


そう、ナイトやレッドメイジも蘇生魔法が使えるのだが、このゲームではデスペナルティとしてレベル×200の経験値が減るなかで、減る経験値が本職のホワイトメイジしか使えない蘇生レベル3だと減るのが本来の5%に、2だと25%に、ただの蘇生魔法だと50%に軽減されるので、出来れば皆本職の蘇生を受けたいのが人情というものだ。

アリアはまだレベル的に蘇生2しか使えないので25%だが、プレイヤーのレベルが60だとしても、素で12000減るよりはナイトの蘇生で6000になる方が良いが、それがさらに3000になると思えば、経験値を稼ぐのが大変なこのゲーム的には絶対に3000ですませたい。

しかしそこで言葉をあげたのは、当のナイトだった。

「申し訳ないが、そちらのナイトの蘇生で良いから俺を起こしてくれないだろうか?
俺は一刻も早く起きて衰弱を終えてパーティを守る義務がある。
もしお姫様のMPに余裕があるようなら、レッドメイジを起こしてやってもらえないか?
できれば他のメンバーは白さんの蘇生2で起こしてもらうが、状況的に危なくなったら俺がタゲをとって敵を引き離している間に彼の蘇生で全員起こして白さんのワープ魔法で安全な場所に逃げてもらうので」

その場に居た全員がおおーーー!!!と思う。


『…ナイトの鑑だな』
と、こちら側のナイトが感嘆したようにパーティ会話で呟いた。

『ああいうナイトさんこそ白さんの蘇生2で起こしてあげたいですね』
『本当に。どうでしょう?あちらのパーティが復帰するまで待ちませんか?』
『それが良いと思います!』

『…そういうことでギルとアリアさんもよろしいですか?』

何故か無言の2人。
真っ先に反応しそうな2人が無反応なのをいぶかしく思いながら、ノアノアがそう言うと、まずギルが

『あ、ああ。悪い。考え事してた。いいんじゃね?』
と答え、

『そうですね。そうしましょう』
と、アリアは答える前にすでに蘇生2の詠唱に入っていた。





Before <<<      >>> Next (1月7日0時公開予定)




0 件のコメント :

コメントを投稿