とある白姫の誕生秘話──伝説のストーカー、その名は…1

お姫さん、それダメなやつだ!断れっ!!

伝説のストーカー、ヒゲとの付き合いは、そんなギルの言葉と共に始まった……




いつもの通りのレベル上げパーティ。
今日は狩り場へ向かうにはアクティブな敵の多い所を通るため、全員音を消す白魔法をアリアにかけてもらっての移動。
その途中でみつかる遺体。

『えっと…蘇生して差し上げてよろしいですか?』
と一応時間が若干でもかかることだしと、パーティのメンバーに許可を求める優しい白姫の言葉に否と言うほど余裕のないプレイヤーもおらず、皆快く了承。

その上でアリアが何故かこんな場所で1人で倒れている戦士に蘇生魔法をかけて蘇生する。

白姫の小さな手の先にやどった柔らかな光が倒れている戦士を包み込み、ふわりと身体が浮くように置き上がる戦士。

「ありがとうございます。助かりました」
と深々と礼。

「いいえ。ちょうど通りがかって良かったです。
ではお気をつけて。
私達は行きますね」
と、にこやかに微笑みながら手を振るアリアを、しかしながらその戦士は

「あの、申し訳ないのですが…」
と、呼びとめた。

「はい?」
こくんと小首をかしげるアリア。

彼女が足を止めると、彼女を守るように前を歩く竜騎士も足を止め、彼女に付き従うように後ろを歩くブラックメイジがあたりにモンスターが現れないかを警戒する。
それに倣って他のメンバーもやや壁沿いに移動して待機した。

「もし徒歩で帰られるのなら、姿消しの薬を持参しておりますのでお分けいたしましょうか?」

ホワイトメイジの姿消しの魔法と同じ効果の薬。
それは自分で魔法を使えるアリアには本来必要がないものなのだが、魔法には効果時間があり、定期的にかけ直さなければならないのだが、姿消しの効果は魔法を使用したり攻撃行動を取ったりすると切れてしまうため、敵から見えない場所までもたないと他のメンバーにかけ直す時に彼女にかかった魔法は解けてしまう。
そこで魔法で自身にかけなおしていると、呪文の最中に見つかってしまうので、一瞬で効果を発揮できる薬を彼女はいつも持参している。

もちろん本来はそういう場所で切れそうになった時は切れそうな本人が薬を使うべきで、ギルやノアノアなどは黙って自前の薬を使うが、中にはホワイトメイジがかけてくれる事を前提に薬を持参しないプレイヤーも少なからずいるので、アリアは多めに薬を持ち歩いているのだ。

そんなこともあって、今回も戦士がこんなところで1人で死んでいるということは、薬がきれたのかと思って聞くアリアに、戦士は

「ご親切にありがとうございます。
でも俺は1人で来たわけではなくて…実はパーティーが少し離れた所で全滅していて、助けを呼ぶために人が通りそうなあたりまで逃げて来たんです。
狩り場に向かう途中で本当にお手数をおかけして申し訳ないのですが、うちのパーティの白だけでも蘇生して頂けないでしょうか?」
と、申し訳なさそうに申し出た。

なるほど。そういうわけだったのか…と、納得する一同。

『どうしましょう?皆さんが少しだけお時間がよろしければ、私個人としては助けてさしあげたいんですが…』
と、それはパーティ会話で相談するアリア。

『俺様は良いけど?』
とまずお姫さんに賛同する竜騎士ギルを皮切りに
『私もかまいませんよ』
『そうですね。明日は我が身かもしれませんし』
『普通に死に戻りだとデスペナが痛いゲームですしね』
『救出に行きますか~』
と、ギルとノアノア以外も了承してくれたので、

「わかりました。
追尾しますのでそれでは案内してくださいな」
と、最終的にアリアが了承の意を示して、戦士の案内で彼らのパーティが全滅している場所まで向かうことになった。




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