「実は…先日の釣りでお隣だった方なんですけど……」
と、お招きをされたアリアの可愛らしさ満載の私室で話を聞いて、ギルベルトはため息をついた。
毎日毎日レベル上げに勤しんでいるわけだから、野良のパーティで会ったメンバーを1人1人覚えているものなのだろうか…。
そもそもとてつもなく珍しい名前ならとにかくとして、まあそれほど変わった名前でもなく、レベル上げの時のホワイトメイジの装備とは違う釣り人装備。
何故隣にいるだけで彼女だとわかったのか……
そんなギルベルトの疑問はアリアの口から明らかになった。
聞いて欲しい話というのはそのことだったのである。
「実は…そのナイトさん、ルークさんとおっしゃるんですけど、ルークさんとご一緒させて頂いたパーティでやっぱり御一緒させて頂いた詩人さんがいらして、その詩人さんとは意気投合してパーティ終了後、フレンド登録を交わしたんです」
「ふむふむ」
まあそれ自体はそう変わった話でもない。
元々リアフレがやっているという事でもなければ、フレンドとの出会いはたいていギルド関係じゃなければレベル上げパーティだ。
ギルベルトだってそうやって知り合ったギルド外の友人は少なくはない。
だからなるほど?と思いつつ黙って聞いていたら、一瞬の間…
「その詩人さんからね、後日tellがあったんです」
「ふむ?」
「ルークさんはその詩人さんのフレンドさんで…」
「ほお?」
「パーティのあと、詩人さんが私のフレ登録を交わしたと聞いて、詩人さんだけずるいとおっしゃっていたそうで…」
「なるほど?」
「自分もフレ登録をしたいということで…」
「おう?」
「詩人さんにフレリストで私の居るエリアを聞いて…」
「………」
「そのエリアを探しまわって偶然の再会を装って話かけていらしたそうで…」
「アウトっ!!!!」
本当に何故そんなにストーカーホイホイなのだろうか…このお姫さんは!!
ギルベルトはリアルでデスクにつっぷした。
(…なんか…色々可愛い雰囲気がダダ漏れてっから…だよなぁ……)
1人リアルで呟いて、ちらりとディスプレイに視線を戻す。
たぶん…たぶんだが、これを追っ払ってやっても、また新たなストーカーが現れる気がする。
さあ、どうする、ギルベルト・バイルシュミット。
諦めて見捨てる…という選択肢は残念ながらない。
そうなると取れる対処法は……
『もしもし、ジジイか?俺だ、ギルベルトだ。
ちょっと相談があるんだが……』
ディスプレイでお姫さんの相手をしながら電話した先はノアノアこと本田の携帯。
そして巻き込む気満々の提案。
それに電話の向こうで聞こえる本田のため息を完全に無視して、ギルベルトはディスプレイの向こうの姫君に話をするためにキーボードに指を走らせた。
──お姫さん、ちょっと提案があるんだけどな
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