初っ端そんな一幕があって、フェリシアーノがすでに気力を削り取られているところに、
「フランさんは男の娘だったんですかっ?!
オタク魂的に惹かれなくはありませんが、私の最大の推しはアーサーさんですっ!
そこは譲れませんっ!だからアーサーさんのお兄さんは返して頂きますっ!」
と、立ち上がってピシっと指を指してそう言う菊。
菊、お願いだから現実に戻って来て…俺、さらに帰りたくなっちゃったよ。
そんな事を思っているフェリシアーノの目の前では、アーサーがすでにハンカチを握って目を潤ませていた。
うん、見た目には可愛い。
状況的には…まるで愛人に対峙する本妻のようだ。
二人の雰囲気見てもそんな感じだよね…アーサーお育ち良さがにじみ出ているし…などとフェリシアーノがすっかり現実逃避していると、いきなりの菊の発言に目を丸くしたエリザは、菊とアーサーを交互に見比べて、次の瞬間、ぷ~っと吹き出した。
「かっわいいわぁ~!二人共っ!!やんっ、もうギルベルトがお熱なのもわかる気がするっ」
ケラケラ笑って当たり前にアーサーの隣に座ると、エリザはいきなりアーサーを抱きしめた。
抱きしめられたアーサーは硬直している。
「あたしはエリザ。ギルとフランのクラスメートで、ギルの部活のマネやってるの。
大丈夫よぉ~。フランは確かに老若男女OKな変態だけど、ギルに手を出しそうになったらあたしが張り倒しておいてあげるからね~。
泣いちゃだめっ。泣いた顔も可愛いけど、笑ってた方が絶対に可愛いからっ」
と言われてアーサーはさらに動揺してフェリシアーノに救いを求める目を向ける。
「あ~…あのね、エリザさんは俺の古い知り合いで、ちゃんと好きな人いるから大丈夫な人だよ」
あまりに色々ありすぎて何から話して良いかわからずに、しかし一番の誤解は解いておこうと、フェリシアーノは口を開いた。
「でね、エリザさん、どっちかっていうとアーサーにお兄ちゃんとガッシリくっついて欲しいという要望を持ってるらしいんだ」
ああ、もうなんかあとよろしく…とできるように、フェリシアーノは今度はエリザに視線を向けた。
「実は…昨日急に兄ちゃんが冷たくなったのが、フランて人から何か言われたかららしいって聞いて、アーサー、フランて人が自分とお兄ちゃんを距離取らせようとしているんじゃないかって思ってたんだ」
と、今度はこちら側の状況を知らせた。
「やっだぁ~♪アーサー君たらかっわい~♪
大丈夫っ!フランとギル単なる悪友同士よ?
もう一人トーニョって言う悪友いるしね。特別な関係とかじゃないわ」
と言われてアーサーは動揺しながらも
「じゃあ…兄さんの事は……?」
と、問いかける。
「お友達よ、お・と・も・だ・ち☆」
バチーンとウィンクをするエリザに、ホッとした様子で、でも抱きしめられたままなので少し困ったように身じろぎをした。
「では、フランはとりあえずはアーサーさんと彼のお兄様を引き離そうというのではないんですね?」
と、そこで菊が念押しをするように言うと、エリザは大きく頷いた。
「もちろん!万が一あの変態がそんなこと考えようものなら、あたしがフライパンの錆にしてくれるから安心してくれていいわっ!
あたしはむしろあいつがあの変態や他の変な女とくっついて色々面倒な事になるくらいなら、可愛い可愛いアーサー君とくっついていて欲しいのよ」
「それは…二人の仲を修復する協力をしてくれると取ってもいいんですね?」
「ええ!それどころかもう絶対に壊れないくらいびたぁ~~~っとくっつくお手伝いしたいんだけど?」
「それは素晴らしいですっ。
私は大切な友人であるアーサーさんが悲しまれるのは嫌なんですっ!
だからアーサーがもう二度と泣かないでいいように、お兄さんの方にももう二度と離れようと思わないようにびたぁ~~っとくっつく覚悟をして欲しいんですっ!」
「そうよねっ!ギルベルトはあれで良い男だし、アーサー君は可愛いし、お似合いよねっ!」
「ええっ!そうですよねっ!そう思いますよねっ!」
アーサー…このままだと兄弟の域越えるためのお手伝いされそうだけど、いいの?
菊…アーサーに対しては情熱燃やしちゃうタイプな上に、エリザさんにガソリンばらまかれてるよ?
と、フェリシアーノは秘かに心配するが、アーサーはその二人の会話に少し嬉しそうに顔を赤らめている。
肝心のアーサーがそんな状態なのに気づくと、これダメだとフェリシアーノは諦めてポテトをかじる事に集中する事にした。
こうしてエリザと菊の『リア充作成計画』が着々と進められる事になった。
このある意味最強コンビを止められるわけもなく、フェリシアーノは否応なしに巻き込まれていくのである。
Before <<< >>> Next(12月7日0時公開)
0 件のコメント :
コメントを投稿