フェリシアーノとベンチに座ってからの記憶が全くなく、気付けば目の前にギルベルトがいたとのことだ。
おそらく…座った瞬間眠らされたらしい。
和田は
「カークランドさん、別件の質問なんですが…」
と切り出した。
「あなたは昨夜露天風呂に忘れ物を取りに行かれたとの事ですが…その時ご自身の忘れ物の他に何かみつけられませんでしたか?」
当日…ギルベルトにした質問だ。
その言葉にアーサーは、あ~っと声をあげた。
「はいっ。時計を…これなんですけど…」
と、バッグから腕時計を出す。
「洗面台においてあったので忘れ物かと思ってあとでフロントに届けようと思って忘れてました」
アーサーの手から時計を受け取ると、和田は
「ありがとうございます。
さらに確認させて頂きたいのですが…この時計はあなたが露天に入られた時にはありましたか?」
と、さらに聞く。
それに対してアーサーはフルフルと首を横に振った。
「確かですか?」
とそれに再度確認をいれる和田。
それにもアーサーはコックリうなづいて言う。
「はい。丁度俺が忘れたペンダントのすぐ横に置いてあったので…。
さすがにあればそれを置く時に気付きます」
「そうですか、大変参考になりました。ありがとうございます」
和田はにっこりと笑みを浮かべてアーサーに頭をさげる。
その時、警察官が一人
「失礼します」
と部屋に入って来て和田に何か耳打ちした。
和田はそれにうなづくと、その警察官は部屋を出て行く。
それを見送って和田は犯人が今度はフェリシアーノの身代金としてもう5000万、同じくルイヴィトンのスーツケースに入れて今日中に用意するよう要求して来た旨を伝えた。
それに対してはルートがまた報告もかねてヴァルガス家に連絡をいれる。
事情を話すと当たり前だがヴァルガス家はもう5000万即届けさせる旨を伝えて来た。
ルートはそれを和田に伝える。
全てが終わると
「お疲れでしょうし、もうお戻り頂いて結構ですよ」
と言う和田の言葉で、丁度手当の終わったギルベルトはアーサーと一緒に部屋を出た。
こうして離れに戻る道々、
「何か…犯人の顔とか覚えている事は?」
と、それまでは口を挟むことなく黙っていたルートが聞いてくる。
「ごめん…ベンチ座ってからの記憶が全然なくて…」
フェリシアーノがまだ行方不明なのは聞いているアーサーは、さすがにしょぼんとうなだれた。
「いや…アルトのせいじゃない。どちらかと言うと俺のせいだ。
あなたが気にする事じゃない」
ルートもうなだれる。
そんな2人に、ギルベルトは少し考え込んで
「まあ…結局身代金を二重取りしたいってことなんじゃないか?」
と、顎に手をあてた。
「まあ…任せろ。今回も俺様が責任持って受け渡し役をやるから」
と、すっかりメンタルが回復したギルベルトが自信をありげに請け負うが、それにルートは首を横に振った。
「今度はタイムトライアルとかもないだろうし、俺がやる。
アルトが戻ってきたわけだし、再度不埒な輩が出ないように護衛も必要だろう?」
「いや、お前が護衛すればいいんじゃね?」
「でも…フェリシアーノは俺の……」
兄弟が言いあう中、アーサーはきっぱり
「それ決めるのって…俺達じゃなくて誘拐犯なんじゃないか?」
と、真っ当にして鋭い意見を述べた。
「確かに…」
二人して苦笑するバイルシュミット兄弟。
「とりあえず2人ともいったん部屋戻って休んだ方がいい。どうせ昨日は寝れてないのだろう?俺も部屋で寝ておこう」
と、運び屋論争に一段落ついたところでルートが提案した。
「そうだな…」
ギルベルトはそう言った後に、
「ルッツ、どうせならお前も部屋に来ないか?」
と誘う。
自分は最愛の恋人が戻ってきて落ち着いたが、ルートは一人だと色々嫌な想像もまわるだろうと思ったギルベルトの言葉に、ルートは苦笑。
「いや、起きてる時は大勢の方がいいかもしれないが、寝る時は一人の方がゆっくり寝れる。
気持ちだけもらっておく」
と、自分の離れに戻って行った。
無事を喜ぶ恋人達の間に入るのは野暮と言うものだ…と、そこはルートでもさすがに思う。
兄達は気にしないかもしれないが、自分がきまずくて落ちつかない。
なので断固として遠慮して、1人で自分の離れに戻った。
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