温泉旅行殺人事件_殺人者の影と捕らわれの姫1

行方がわからない、まだ状況も確定していないアーサーとフェリシアーノと違って、確実な犯罪の犠牲者が出たと言う事で、旅館は上へ下への大騒ぎになった。

再度フロントがその旨を警察に連絡して、花火を見物していた宿泊客も安全のため母屋へと集合させられた。

やがて警察が到着。
従業員が事情を説明している。

宿泊客が殺された?
それとアーサー達がいなくなったのと何か関係があったら…変な物を目撃してたとしたら…


とりあえず従業員から事情を聞き終わると、事件の関連性もあるかもということでアーサーとフェリシアーノの事についてギルベルトとルートも事情を聞かれる事になった。

ギルベルトがまず、いなくなった時の状況とロケットの事を説明する。
その後…宿についてから遺体が発見された840分までのアリバイを聞かれた。

正直…もうそんな物はどうでも良かった。

死んだものは生き返るわけじゃないっ!先に俺のお姫さんを探してくれと喉まで出かかって、飲み込む。


とりあえず…いったん取り調べに使っている部屋から出されて、ロビーへ。
そこに集合している他の宿泊客のざわめきがなんだか気に触る。

「兄さん…大丈夫か?」

心配するルートの声すら煩わしい。
頭に血がのぼって冷静に頭が働かない。

「今…話しかけないでくれ…頼むから」

平静さを失うあまり、刺激されると絶対に口にしてはいけないような事を口走りそうで、ギルベルトはルートにそう言った。


何故…あの時、”これが最後の機会…な気がして”というアーサーの言葉を雨が降るのかなどと楽観的に考えたんだろう…そこで気をつけて離れない様にしていればこんな事には…

まだ小さな温かい手のぬくもりが残っている気がする。

もし…事件に巻き込まれてさらわれたとしたら…生かされている可能性は極めて低くなる…
あの幸せな温かいぬくもりを永遠に失ったのかも知れない。

そう考えた途端また強烈な吐き気と息苦しさにみまわれる。


「ギルベルト・バイルシュミットさん、ちょっとお聞きしたい事があるので、もう一度いらして頂けますか?」

ふいにまた警察官がギルベルトを呼びに来た。

「俺も…一緒ではダメですか?」

血の気が失せて真っ青で今にも倒れそうな兄を心配してルートが聞くが、

「申し訳ありませんが…」
と、倒れそうなギルベルトを抱える様にして警察官が中へと連れて行った。


「何度も申し訳ありません、おかけ下さい」
言われてギルベルトは椅子にかける。

「行方不明の二人は…みつかりましたか?」

かすれた声で聞くギルベルトに、捜査官は

「残念ながらまだ…。
しかしかなりの人数を動員して現在捜索中です」
と首を横に振った。

「そう…ですか」

もうそれでここで何を話しても仕方ない気になるギルベルトだったが、向こうはそうではない。
当たり前だが本題に入ってくる。

「バイルシュミットさんは19:30前、カークランドさんが露天風呂に忘れ物を取りに行かれたのに付き添ったという事ですが…その際、カークランドさんはご自身の忘れ物の他に何か拾われたとかそういう話はなさってませんでしたか?」

捜査官の質問にギルベルトはその時のやりとりを思い出すが、アーサーが何か言っていたという記憶はない。
しかしそれがまさか今アーサーがさらわれたのと関係するのだろうか?

「それが…行方不明になったのと何か関係しているんですか?」

答えてくれないだろうな…と思いつつ聞いてみると、やはり

「申し訳ありませんが、捜査上の情報に関してはお答えする事ができません」
と、返される。

まあ…どちらにしても”何かみつけた”ならとにかく”何もみつけてない”わけだから事態は変わらないだろう。

「いえ、少なくとも俺は何も聞いてません。忘れた物があったとしか…」

「何か見覚えのない物を手にしてたとか言う事もないですか?」

「いえ、いつも持ち歩いている鞄だけです。」

「その鞄の中身は確認しましたか?」

「いえ、してません」

「そうですか、ありがとうございました」

言って捜査員は立ち上がってお辞儀をする。


そんな感じで全員入れ替わり立ち代わり事情聴取を受け、一通り終わったのは朝の2時。

「一応今晩はもう部屋に戻って頂いて結構です」
と、言う事でそれぞれ離れに戻る。




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