「どうだった?あった?」
とにこやかに聞いてくるフェリシアーノと対照的に少し難しい顔で考え込んでいるように見える。
「ああ、あったっ!」
とやはりにこやかに答えるアーサーを
「お姫さん、ちょっとフェリちゃんといてくれ」
と、少しフェリシアーノの方へやって、ギルベルトはルートに小声でささやいた。
「ルッツ、何かあったのか?」
「うむ…就寝になる前に少し相談できないだろうか…」
と困惑した表情で言うルート。
「なんだ?花火終わるともう寝る時間だよな。
そしたら、あまり時間ねえけど、今、花火が始まる前で良いか?」
食事中は何もなさげだったので、今フェリシアーノと2人で待っている間に何かあったのだろう。
それなら2人でということだろうしと思って言うと、ルートは
「そうしてもらえると助かる」
と、ホッと息をついた。
花火が始まるまであと10分弱。
「お姫さん、俺ら何か飲み物買ってくるわ。
とりあえず…母屋の西側のベンチのあたりに陣取っててくれ。
ちょっと影になってるから周りからのぞかれないしっ」
と言って了承を取ると、ベンチに向かう2人を見送って、
「で?なんだ?」
と、隣の弟に視線を向けた。
それにルートは
「実は…なかなか言いにくいのだが…」
と口ごもるが、ギルベルトは
「時間があんまねえから、簡潔にな。
兄弟で今更遠慮する事もねえだろ」
と、さくりと促す。
それにルートは一瞬、うっ…と、動揺するも、結局時間がないのは事実なので、覚悟を決めて口を開いた。
「前回の事件の諸々で、俺はどうやら姉のキアーラのみならず、フェリシアーノの両親にも認められて気に入られたらしい」
「おう、それはめでてえな。良かったじゃねえか」
「そこから話が、最終的にフェリシアーノが継ぐ事になる財閥の現総帥である祖父に行き…」
「おう?」
「その祖父が人を使って俺の身辺を調べさせて…」
「おおう??」
「身元…親が警視総監で…俺自身が海陽の生徒会長でということなど知って…それまでの情報も含めて判断して…」
「…お…おう?」
「将来に渡ってフェリシアーノの側に置いておきたいとのことで……」
「…何か…問題か?」
「最終的にはキアーラの子を養子にでもすればいいから…と…」
「………」
「早急に取り込めと言う事で」
「………」
「なんなら身体を使って構わないと、今回夜の関係のために必要な諸々を持たされてきたらしいんだが……」
ゴン!!とギルベルトは思わず壁に頭をぶつけた。
なんて羨ま…いやいや、けしからん話だ。
「フェリシアーノも非常に乗り気になってしまっているのだが、俺達はまだ未成年で、籍を入れられる年でもないのだから、そのあたりはきちんと節度ある関係を保つべきだと思うのだが……」
俺様の弟、真面目だな…と、ギルベルトは遠い目になる。
いや、正しい、正しいわけなのだが…
親公認、将来決定、本人も乗り気という前提であれば自分なら手を出してしまっている気がする。
相談というのは、手を出す出さないではなく、もう出さない前提で、どう断れば良いだろうかということだ。
「別にフェリシアーノとそうなる事が嫌なわけではない。
そこは誤解されたくはない。
そこは誤解されたくはない。
ただ、まだ時期ではないと伝えたいのだが……」
と、真剣に悩む弟の真面目さに拍手喝さいを送りたい気分で、ギルベルトは
「その通り伝えればいいんじゃね?
フェリちゃんの事はすげえ好きだしいつかは抱きたいけど、自分は警察関係者の子で、幼い頃から法律は遵守するように育てられてきたから未成年のうちに関係を持つのはどうしても後ろめたい。
本当に好きな相手だからこそ余計に後ろめたい気持ちで初夜を迎えたくないんだとか」
と、アドバイスする
すると弟は目から鱗が落ちて死んだ魚のような目から生き生きとした魚に生まれ変わりましたと言わんばかりに元気を取り戻した。
「それかっ!!なるほどっ!!
フェリに対しての気持ちを情緒的に伝えつつもきちんと自分の言いたい趣旨も伝えられる。
さすが兄さんだっ!!!」
それでは戻ろうかっ!!と元気よく歩いていく弟の姿を一歩後ろから見ながらギルベルトは苦笑する。
身体も大人並み以上で頭も悪くはないが、そういうところは本当に年相応以下の不器用さで、それでも一生懸命恋愛している姿はどこか微笑ましい。
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