温泉旅行殺人事件_散歩と浴衣と露天風呂2

露天までは母屋を通り抜けて徒歩で行く。
風呂には外鍵と内鍵がついていて、外鍵は貸し出し用が2セット。
露天に向かう前に母屋で借りて、帰ってきたら返す。

なので部外者が露天に入る事はできない。

そして内鍵は文字通り内側からの鍵なので、現在使用中だと早めに行って外鍵を使っても内鍵でロックされているため入れないという仕組みだ。


「結構…遠いね。足場も悪いし、夜なんてめっちゃ歩きにくそう」
ご丁寧に草履まではいてきたせいで、余計に歩きにくくて景色そっちのけでついつい愚痴の出るフェリシアーノ。

それでなくても道は細い木でできていて二人並んで歩くのがやっとな上に曲がりくねっているので歩きにくい。

「うむこれだけ広いと安全管理どうなっているのだろうな。部外者でも忍び込めそうな気がするな」
と、こちらも景観をそっちのけな様子のルート。

確かに…母屋から奥、離れのある中庭は全体を塀がおおっているものの、母屋より手前に外庭はその気になれば部外者でも簡単に入り込めそうだ。

もっとも四方を山でかこまれているため、山を越えてこなければいけないので大変なのは大変そうだが…。


その一方でアーサーは

「小川…水綺麗だよな~、…冷たっ」
と、人に見咎められる心配のない道まできたせいで、自分の格好の事もすっかり忘れてはしゃぎつつ、道沿いに流れてる小川に少し指先をつけて、あわててひっこめる。

「お姫さん、それでなくても脂肪少なそうだし寒いだろ。風邪ひくぞ」
ギルベルトは自分のハンカチでその指を拭いてやると、指先を包むように手を握った。

一応ギルベルトもルートと同様セキュリティが気にならなくもないのだが、それよりもはしゃぐ恋人の可愛さを堪能する事の方に重点が置かれている。

普段だと恥ずかしがってなかなかベタベタは出来ないしさせてもらえない恋人様も、完全に人の目が届かない場所だと言う事もあって、手を繋いでも肩を抱いても嫌がらないどころか、寒いからと自分からくっついて来てくれるのだ。

男としてこれを堪能せずにどうする、と、思う。

「なんか…山に囲まれてて木と小川と空しか見えなくて建物も全然なくて、ホントに旅行してるって感じだよな♪ほら、ひな菊とかも咲いてる♪」
子供のようにその手を大きく振りながら、楽しげに言うアーサーに、全員が微笑んだ。


そして露天に到着。

「じゃあはいるか~」
と、全員露天へ。



「ひゃ~さっみぃ!」
外は冬だけあってめちゃくちゃ寒いが、その分温かい湯につかった時の気持ちよさは格別だ。

「…ああ…気持ちいい…」
「確かに…気持ち良いねぇ…」
真っ白な肌を蒸気させてぽわんとつぶやくアーサーとフェリシアーノに

「悪い…ちょっとトイレ…」
「…俺も……」
と、唐突に湯からあがる兄弟。

「…なんだろうな?」
「なんだろうねぇ…2人ともお腹でも壊してるのかな?」
と、それを見送って首をかしげるアーサーとフェリシアーノ。

結局二人はそのまま戻ることなく時間に。


「二人とも一体何してたんだ?」
と首をかしげるアーサーに、ギルベルトとルートは

「なんでもないっ」
と二人声をそろえて首を横に振る。

そしてギルベルトがそれ以上その話はやめようとばかりに

「あんまりのんびりしてると湯冷めするから行こうぜ」
と、言ってみんなを促した。




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