青い大地の果てにあるものGA_13_12

祝初温泉旅館1


「すっげ~!!温泉旅館」
歓声をあげて駆けだすアーサー。

翌々日、伊豆に到着したブルーアースご一行様はフランソワーズの計らいで温泉宿に泊まる事になった。

「俺も温泉旅館なんてものすご~く大昔に一回泊まった事あるだけだな。
極東に居る時は基本里から出る事なかったし」
と、言葉は淡々としつつもどこか嬉しそうに立派な旅館を見あげるギルベルトに、

「俺、出る時はたいてい戦闘で終わったら即次の戦闘だったから、旅館どころか日帰り温泉すら行ったことないっ!」
とアーサーはわかりやすくはしゃいでいる。

「まあたまにはね、こういうのもいいでしょ。」
手配したフランソワーズはそんな二人の反応に満足げに頷いた。


一見幸せそうな平和な時間。
しかし本当は色々切羽詰まった状況にそれぞれ不安を抱えているのは、この場にいる皆が知っている。

それでも…とてつもなくヘビーになるであろうこの先の戦いを考えれば、必要ない時には極力リラックスをして心身ともに休めねばならない。

そういう意味では全支部一過酷な環境である極東支部育ちのアーサーはすごいとエリザは思う。

自分達本部組の中では一番冷静で理性的なギルベルトですらキレかけた状況を、なんとかここまで持ち直してくれた事には感謝の念しかない。

今だって危険なはずの遠征よりもさらに危険な状況になっている本部に可愛がっている弟を送りこんだギルベルトは、おそらく本来なら心中穏やかではないだろう。

それでもアーサーが居ればこちらに集中できるのだ。

そして…ジャスティスの中でもっとも信頼を置かれているギルベルトが崩れない限り、随行したフリーダム部員達も崩れない。

だからこそ…今は少しでもリラックスをさせなければ……ジャスティス達はもちろんのこと、随行員達も…。



こうして宿泊する事になった温泉旅館。
部屋はギルベルトとアーサーは当たり前に2人同室で、エリザとフランソワーズ、それに随行員の中の2名の女性も同室。
2人ルートと共に本部に戻って8人になった随行員は2名の女性を抜いた6名が、33名に分かれて泊ることになった。


「部屋も広いな~~~」
部屋に案内されてアーサーは窓際に駆け出した。
「海が見える~。すっげえ綺麗」
楽しげに振りかえるアーサーを追ってゆっくり窓際に立つギルベルト。

「ああ、ほんとだな。
そう言えば俺様日本の海まじまじと見んの初めてかも。実家山奥だったし」
まぶしそうに手を頭のあたりにかざし目を細めて言う。

嫌な思い出その他全てがすっきりというまでではないものの、愛しい恋人様がこれだけ楽しそうならまあいいか…と、思った。

アーサーもおそらくこれまでの人生はギルベルト以上に嫌なこと辛いことのオンパレードだったのだろうから、これからの人生は出来れば自分の手で幸せにしてやりたい。

そんなどこかほんわりとした気持ちで色々を楽しむ恋人を見ていると、乱入者が突撃して来た。




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