青い大地の果てにあるものGA_13_8

初遠征8

「ル~ッツ、入るぞ?」

私室の連なる2階エリア。
アーサーと同室のギルベルトと違い、ルートは個室だ。

なので兄弟の気安さもあり、ノックと同時にドアを開けると、弟は電話を手に深刻な様子で考え込んでいた。
  
さて、どう切りだすか…と悩んだが、おそらく自分がキレたのが発端だろうからと、
「さっきは感情的になって悪かったな。
タマに言われて頭を冷やした。
で、その眉間のしわはそのせいか?」
と、もう普段通りなのだということがわかるようにと、軽い調子でそう言って自分の眉間をトントンと指さすと、ルートはひどく深刻な顔のまま、

「兄さん…」
と、ギルベルトを見あげて来る。

「ん?なんだ?」
と、部屋に入って話をする事自体を拒む様子がないようなのでギルベルトは後ろ手にドアを閉めて、ベッドに腰をかけているルートと並んで座ってその顔を覗き込んだ。

盾のジュエルの影響なのか元々の資質なのか、5歳も年下なのだが筋肉がわかりやすくムキムキで上背も自分よりもある弟だが、こんな時は随分と幼く思える。
正直可愛い。
俺様の弟まじ可愛い。

そんな事を思ってついつい和んでいたギルベルトだが、ルートの方はかなり深刻な問題を抱えていたようである。

「今から俺だけでも戻ったらダメだろうか?」
と、その言葉を口にする表情は可愛い弟の顔ではなく、上司にお伺いをたてる部下の顔だ。

それでギルベルトはさっと脳内を切り替えた。

「理由は?」
と短く聞くと、ルートはこちらも短く

「今日、本部に襲撃があって、梅とフェリが出動したらしい」
と答える。


「あ~…それは…確かに怖えな」

おそらく遠征組は遠征組で初の試みなのと同時に、相手の基地に攻め込むと言う事はとどのつまり、アウェイでの戦いになるため余裕はないだろうから心配をかけまいとこちらへの報告がなかったのだろうが、そのあたりは言っておいてもらわなければ困る。
凱旋しても帰る場所が潰されていたでは笑えない。

「ちょっとトーニョに電話するわ」
と、スマホを取り出すギルベルト。

だが、ルートがその手を取って止めると、
「まだ…他にもあるんだ」
と、さらに難しい表情で言う。

え?他に?これ以上何が?
まさかそれで本部がすでに潰れているとかじゃないよな?と思いつつも、視線で続きを促すと、ルートは少し考え込んだ。

「なんというか…あいつの言うことだから今ひとつ要領を得ないんだが…」
「おう」
「ジュエルが…体内に取り込まれたらしい…」
「へ???」

色々なケースがギルベルトの脳内をかけめぐった。

「えっと…自分のジュエルが自分の体内にということか?
それとも敵に奪われて敵の体内にということか?」

とりあえず答えやすいように二択で聞いていくことにする。
自分が説明に困っている事を兄が察してくれている事にホッとした表情で、ルートは答えた。

「前者だ」

「で?必要な時にアームス化できるか出来ないかは?」
「アームス化はできるらしい。ただアームス化を解いたらまた体内に戻るということだ」

「それは…残ってるフェリちゃん、梅、桜の3人ともか?」
「いや、俺が聞いてるのはフェリだけだ」

「ふむ……それはロヴィやトーニョには?」
「報告はしているらしい」

「わかった。じゃ、そっちに聞いた方が早いな。
状況によってはお前だけ戻すってのもありだと思うが、とりあえず詳細を聞くため本部に連絡する」

と、いったん弟との会話を打ちきって、ギルベルトは改めてスマホを手にした。




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