こうして2人して向かった先は、いつも過ごしているプロイセンの別宅。
本宅と違ってここはドイツも滅多に来ないプロイセンのプライベートスペースだ。
ドイツ国内でプロイセンと会う時は、たまに本宅でドイツを交えての時もあるが、たいていここで2人で過ごす。
今日はメインは簡単にということでオムライスで、サラダの上のカリッカリに焼いた自家製ベーコンの良い匂いが食欲をそそる。
いつもの分厚い生地の黒いエプロンをつけて片手で軽々フライパンを扱う姿はカッコいい。
こんなカッコいい相手が自分の恋人だと思うと嬉しくも誇らしく、イギリスが思わず見とれていたら
「お~い、手ぇ止まってっぞ。皿くれよ、皿っ」
と、片手に菜箸、片手にフライパンを持っているために手が空いてないプロイセンが、イギリスの額にコツンと軽く額をぶつけてくる。
止めてくれっ!心臓に悪いっ!!
ほんっきで俺はお前のその顔が好きすぎるんだからなっ!!!
と、叫びそうになってイギリスはあわててその言葉を飲み込むと、オムライスを乗せる皿を取りに走った。
今自分は耳まで真っ赤に違いない。
本当に自分はプロイセンが心底好きなんだと思う。
いつもいつも見とれてしまうし、あの顔が近づくと動揺する。
仕事をしてる時もカッコいいけど、一番はやっぱり料理をしている時だな…。
とまた考えて赤くなって慌ててそんな考えを追いやるようにイギリスは首を横に振った。
「ハニ~?どうしたよ?大丈夫か?」
いきなり頭上から降ってくる少しからかうような声にイギリスがびっくりして取り落としそうになった皿は、おっと危ねえ、と、菜箸を置いたプロイセンの大きな手によって救出される。
「お前…たまにそそっかしいよな。」
よっと、っと小さく声を上げながら器用にオムライスを皿に移しながら笑うプロイセンの笑みが眩しすぎて直視できない。
本当に初恋の相手を前にした乙女か、俺は…と、思いつつも、まあそれと大差ないな…と思ってイギリスはもう一枚、皿を用意した。
カッコいいだけじゃなくて、この男はしばしばお茶目だ…とイギリスは思う。
料理が終わってテーブルの上に置かれたオムライス。
今日はかかっているのはケチャップじゃなくてデミグラスソース。
それも…ネコの絵が描かれた…。
「…なんだよ、これ?」
「ん?ネコだ。
なんかほら、お前ってネコっぽいなと思って」
いや、自分がネコっぽいかどうかは別にして、絵自体がネコだということは見ればわかるのだが……
そんな風に釈然とはしないまま絵を崩すのが嫌でちびちびと端っこから食べていると、正面に座ったプロイセンがクスリと笑みをこぼすのが聞こえる。
「ホント、お前可愛いなぁ。別にまたいつでも作ってやっから、普通に食えよ。
これ、かけるのケチャップなら赤だしハートにでもすっかなぁって思ってたけど、そうしたらお前、上のハートの形の部分の卵だけ残しそうだよな。」
と、自分は特に絵も描いていないオムライスを口に運んでプロイセンが言った。
…見抜かれている……
当たり前じゃないか。プロイセンが俺のために作ってくれたハートを崩すなんてもったいない事できるわけない…と、イギリスは思う。
そこで、うっと言葉に詰まるイギリスにニコリとまた笑いかけて、ほら…と、プロイセンは自分のを注ぐついでに中身が減りかけていたイギリスのグラスにもアイスティを注いでくれた。
そのままの自分を当たり前に許容し、甘やかしてくれる存在。
イギリスに対して、抜けてるところがむしろ可愛いなどと言い放つのは本当にこの男だけだと思う。
…粗野に見せてこの甘さって……と、思わずスプーンを握ったままイギリスがフルフル震えていると、プロイセンはふと笑みを消して、お前さぁ…と、小さく息を吐き出した。
「そういう顔な、他に見せんなよ?
俺様の前だけなら可愛すぎて撫で回したくなるだけだしいいけど、俺様は狭量だからな?
自分の嫁が他の奴にちょっかいかけられるとキレっかもしれないからな?」
へ??
何言ってるんだ、この男……
イギリスはポカンと口を開けて呆けた。
俺に対してそんなこと思うのお前だけだ、と、声を大にして言いたい。
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