秘密のランチな関係後編_5

「そういえばプロイセン…」
「ん?」
「ちょっと今日の事だけどな……」

と、今日のスペインやフランス達の言っていた事を話して聞かせる。

兄気質のプロイセンと可哀想な妹のベラルーシという構図…。

確かに弁当に関してはそういう意味ではないとプロイセンはきっぱり否定していたし、そういう事でうそをつくような人柄ではないとわかってはいるが、確かに自分よりはお似合いなんじゃないだろうか…

ロシア関連の事で少々変わった印象は受けるが、美人でスタイルの良い少女だ。
男として悪い気はしないのではないだろうか……。

なるべく客観的に感情を交えないように気をつけて話し終わると、イギリスはプロイセンの反応を待った。


…怖い……。
正直怖い。

いまだかつてこんなに強い不安を感じたことがあっただろうか…。
それでも視線はそらすまいと凝視してしまっている。

そして1分ほど。

「…あ~、もう。やめろ、その顔」
と、気づいたら目の前でプロイセンが苦笑していた。

「お前可愛すぎだろ、ほんと」

いつのまにかテーブルを超えてプロイセンがこちら側に回ってきて、目の前で膝をついて、大きな手でイギリスのあたまをくしゃくしゃ撫で回す。

その暖かさに思わずポロリと零れ出た涙をイギリスよりは太く長い指先が器用にぬぐってくれた。

「うちの嫁さんは泣き虫だな。」
「…お前の事以外では泣かねえよ」

言われた言葉に即そう返すと、プロイセンは

「そりゃ光栄。旦那冥利に尽きるな。」
と、嬉しそうに笑う。


しかしその後すぐ少し笑みを抑えて

「まあでも…大切な嫁さん泣かせんのは駄目だよな」
と、ちゅっと鼻先に口付けを落とした。

「秘密にしてえって言ったのはイギリスの方なんだけど…それは今でもか?」

切れ長の綺麗な目が静かに問いかけてくる。
それに対してイギリスは首を横に振った。

「いや…あの頃は秘密って形でお前と何かを共有したかったんだ…」

普段は素直な言葉が出てこない口から、スラスラと本音が零れ落ちる。
それはおそらく、心をさらけ出しても決してそれをからかいのネタにしたりして傷つけたりしないプロイセン相手だからだろう。

そんな風にいつになく正直に答えるイギリスに、それまでは大人びた余裕の表情だったプロイセンの顔が赤く染まった。

「…お前……なあ………」
がっくりと落ちる肩。


「プロイセン…?」

不安になってうつむいたプロイセンの顔をイギリスが横から覗き込むと、じろりと下から赤い顔で睨まれた。

「お前…どんだけ萌えさせりゃ気がすむんだよ。
自分振り返れ。
こんな可愛い嫁いて他の奴に気が向く奴いねえぞ」
「へ???」

不思議そうに大きな目をぱちくりさせながら、こくん、と、小首をかしげるその様子自体がすでに犯罪級なんだが…と、プロイセンは内心思う。

なまじ普段はすまし顔で本音を見せないから、ギャップがすごい。
これで本人無自覚なのはある意味やばい。

他人に取られないか嫉妬しないとならないのは絶対に自分の方だと主張したいところだ。


「とにかく……」

それでも素早く体勢を立て直せるのがプロイセンのプロイセンたる所以で大きな長所だ。
こほんと咳払い一つで立ち直ると、プロイセンは続けた。

「隠す必要がねえなら、いつもどおりにすりゃあいいんじゃね?
幸い明後日から親睦旅行だしな。
その時にベラルーシよりイギリスを優先すれば誤解も解けんだろ」
「…そうだな」

プロイセンに…優先される。
その言葉に飛び上がりそうに心躍るが、そこは平静を装ってそうこたえると、

「じゃ、その件はそういう事で…明日に備えてさっさと飯食ってねるか」
と、プロイセンは話を切り上げた。



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