初遠征6
それが初日の昼食後のこと…。
そして夕方…
「た~ま、そろそろ夕飯だと思うぞ?」
と、腕の中で疲れきってぐっすりお休み中の恋人様に声をかけると、くあぁぁ~と子猫のような様子で大あくび。
そしてこしこしと目をこする様子は相変わらず幼げで、確かに成人済みで問題はないはずなのに、手を出してはいけない年の子に手を出してしまったような罪悪感がギルベルトの脳内を駆け巡る。
と、そこでおそるおそるお伺いをたてると、
「温泉宿…ちゃんと取ったか確認しないとだし、俺の方を運べ」
と、手を伸ばして来た。
ギルベルトの方も実はゆっくりと皆で夕食を摂ることで冷静になった表明をしたいとは思っていたわけなのだが…
(そのため…とかじゃねえよな?)
と、少し気になる。
だが、まあそうだったとしても、そうだとは言わないだろうし、考えるだけ無駄ではあるので、考えるのはやめて、ギルベルトは自身がつけまくった紅い痕が隠れるようにと露出の少ない服を選んでアーサーに着せると、ひょいっとその軽い身体を抱きあげた。
そしてそのまま下に降りて行くと、緊張した面持ちで身じろぎ一つせずに自分を凝視する女2人。
ギルベルトの方もどう言って良いかわからずにアーサーを抱えたまま長椅子に座ると、そこで本当に剛毅な彼女にしては珍しくおそるおそると言った感じでエリザが
「…温泉旅館…予約したんだけど……」
とお伺いをたてて来た。
「おう。ならいい。タマの機嫌に勝るもんはねえしな」
と、ギルベルトの方も実は動揺していたわけだが平静を装ってそう言うと、女2人が、はぁ~~~と詰めていた息を吐きだした。
「もう本当に…アーサー様々だわ。
どうしようかと思ってたっ!
最悪戦うのあたし1人になったとしたらどうしようかと思った!!」
と、エリザが言えば、その隣でフランソワーズが
「そうなったら…お姉さん責任もってその分を少しでも補足するため、あたりをかけずり回ってせめて雑魚を相手にする壁になる男くらいかき集めてくるからっ!!」
と、珍しく悲壮な顔で言う。
それにギルは
「まあ、フランソワーズならかなりの数集められそうだよな」
と、苦笑。
しかしアーサーがきっぱり
「いや、同行のフリーダムで足りねえなら、普通に各地に散ってる極東支部に連絡取ってこっちのフリーダム集結させるとこじゃね?」
と、正論を述べると、3人そろって、
「「「あ~、確かに!!」」」
と、納得する。
が、喉元過ぎれば…という言葉は彼女のためにある…と、エリザは再度青くなるわけなのだが、そこでフランソワーズがまた始めた。
「アーサー君てその極東支部の出身なわけよね?
やっぱりギル達みたいなのが特殊なだけで、まあ普通は故郷はホッとするわよね。
極東も建物落ちたし、一時はどうなることかと思ったけど、人員は無事でよかったわね。
やっぱ仲の良い人とかいたでしょうし、ホッとしたでしょ」
と、その言葉にギルがさ~っと実にわかりやすく機嫌を急降下させ、エリザが蒼褪める。
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