初遠征4
「…あ…焦ったぁ~~~~!!!!!」
2階へ消えるアーサーを見送ったあとのフランソワーズの第一声。
「それはこっちの台詞よっ!!」
と、エリザもどっと肩の力を抜いた。
なまじ美人で優秀で、非常に個人主義で研究者として実績をあげられていれば協調性を求められない傾向にある欧州支部の人間なので、空気を読む必要などなかったというのがその原因なのだろうが、本部に転属になったからにはそのあたりは頑張って学んでもらわねばならない。
今回の事はその必要性を実感するのには良い経験だったかと、そんな風に思うも、彼女から出て来た言葉は
「だって、ギル普段は何でもかわすし流すじゃない。
むしろエリザの方が激しやすいというか…」
で、本当にため息しか出ない。
言葉通り自分は本当に真っ先にキレる役で宥める役ではないのだ。
仲裁はギルベルトの仕事だ。
自分がキレて強硬な態度で問題提起をして、ギルベルトが自分を宥めつつ仲裁に入ると言う形で相手から妥協を引き出す。
それが自分達のやり方なのだから、そのギルベルトがキレるような事をするのは本当に止めて欲しい。
そんなのいつぞやのロヴィーノだけで十分、本当にお腹いっぱいだと思う。
しかも今回のその影響はギルだけでは終わらなかった。
「だ~か~ら~、そういう男を怒らすと厄介なのよっ!
あんたピンポイントで奴の地雷踏みぬくから…」
と言うエリザの言葉に、
「…地雷…か……」
とルートが俯いた。
「正直…俺も今まで兄さんは実家の人間関係が重いと思っているだろうとは思っていたが、それを嫌悪しているとは思っていなかった…。
一族の側は…俺が生まれて跡取りとされてからも、それを潔しとせずに兄さんを敬い続ける程度には信頼して慕ってたからな。
俺も皆も誰よりも慕っていたし頼りにしていた。
そんな素振り少しも見せなかったが実はそういうのも嫌だったのか….」
と、今度はルートの方がひどくショックを受けたように落ち込むのを見て、エリザは内心頭を抱えた。
フランソワーズも本当にとんだ藪をつついて蛇をだしてくれたものだ。
エリザ自身は戦闘に怯える仲間を鼓舞するとか、ふざけたことを言う奴を殴り倒すとか、そう言う事なら得意なのだが、正直、仲裁とか慰めとかそういう事に関しては向いていない自覚がある。
これはもう…ギルと同じくそのあたりに長じた恋人様にお願いするしかない。
とはいってもこちらの宥め役は現在本部で留守番中だ。
仕方ない…。
と、エリザはこっそりスマホを出して、誰よりもそのあたりが得意なルートの恋人様に、そのあたりの依頼を要請するメールを打ち始めた。
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