寮生はプリンセスがお好き7章_49

優勝した…!
初めての寮対抗行事に優勝したっ!!!


点数発表がなされると、すでに分かっていた事とは言え、銀狼寮のテントは歓声に包まれた。

なにしろ上級生達の寮を抑えての1年生寮の優勝だっ!!

高校生になるとだいぶ年齢差も少なくはなってくるが、去年まで小学生だった中学1年生と来年度は高校生になる中学3年生では体格差、能力差は大きい。

そんな勝利に沸く寮生達の中で、寮長としての初の対抗行事を終えて、ギルベルトもややホッとしているかと思えば、彼にとってはそれも極々当たり前のことだったのか特に変わった様子もなく、むしろ喜びすぎて羽目を外さないように、さらに次の行事も気を抜くことのないようにと寮生に注意、そして、ひどく緊張の続いていたらしいプリンセスを労わる事に忙しい。

そして、自身の反省も…。


競技者としては完全無欠。
事前のプリンセスの衣装選びも完璧。
競技に出す寮生の選別も適切ではあったと思うが、悔むとしたら1点だけ。

馬車引きリレーの内装点の優勝を逃した事だ。


あれはクレオパトラな金竜に持って行かれた。
古代エジプトの金細工や薄絹で絶妙な雰囲気を醸し出した馬車の室内で、美人と名高いプリンセスの見えそうで見えないという絶妙な露出の衣装。

色気と気品を兼ね備えてそれの評価が高かったのは、ギルベルトも頷けた。


確かにレースとフリルとぬいぐるみに囲まれた自寮の馬車内は、まだあどけなさの残る幼い花嫁な、ギルベルトの可愛いお姫さんにはとても似合っていたし、決して他に劣るようなものではなかったが、この男子校の中であの金竜を超えるには、なんとかそこに色気も組み込まなければならない。

もちろん露出をさせたり変に媚びさせたりする気は絶対に嫌なので、そこはそこはかとなく感じる系の何か…それを考えることが来年度に向けての自分の課題である。

その代わり…審査員5名がそれぞれ選ぶベストシチュエーション賞では、最初の銀狼の宣誓、最後のリレーでプリンセスが自分にだきついたシーンと、2つ取れているので、プリンセスのデモンストレーションと言う意味では上々だ。

まあ、うちのお姫さんは世界で一番可愛いしなっ!と、ギルベルトは至極当たり前の事としてそれを受け止めた。


そんな銀狼の寮長とは対照的に、1人考え込む金狼寮の寮長香。


(…テント内のプリンセスの座席の背もたれと…馬車引きリレーの馬車内、障害物は的当てのうちが最初に投げる予定だった砲丸に仕込み針with毒付きっつ~の以外は特になさそうだったけど、そこまで内々のモノに仕込めるってことは……こりゃ、寮内部に内通者あり的な感じ?
まあ、王大人に要相談っつ~ことか)

今回、普通でも事故の多い体育祭ということで、絶対に何か仕掛けて来られると思っていたら、やっぱり仕掛けられていた。

誰から、とも教えられずの王の養い子の護衛に、1人秘かに神経を尖らせていた体育祭がこれで終了。

証拠隠滅を防ぐために常時携帯している薄いケースの中には今回回収した不穏な仕込みの数々。


やや肩の力を抜きながらも、暗殺者の手先が寮内にまで入り込んで来ている可能性を考えると、気も抜けない。

誰が信用できて誰が出来ないのか……その見極めで、本来は豪胆な気質の彼も頭が痛い。

唯一、隣の寮の寮長だけは、以前偶然とは言えアルを襲撃者から守ったということで敵ではないと王に聞かされてはいるものの、大事に大事にお守りしているプリンセスを巻き込みかねないと思えば、絶対にこちらに協力はしてくれまい。

さて…1人でどうするか……

この3年間の自分の行動、護衛力はそのまま、実家の力、価値とみなされるだけに、なかなか厳しい。

体育祭は終わったものの、寮対抗よりヘビーな彼の戦いはまだ始まったばかり。

金竜寮のカイザーの悩みはまだまだ続く……



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