ツインズ!1章_1

アリス視点

彼女が可愛いを諦めたわけ1



ああ、フランシスは本当に優しい。
あたしみたいに可愛くない女でも幼馴染だって言うだけで心配してくれるくらいに…

わかってる。

あたしみたいに可愛くない女に彼氏の1人もいないなんて当たり前で、それが可哀想過ぎて見ていられないっていうフランの優しい気持ちは。

でも…でもね、ごめんね、身の程知らずだって言うことはわかってるの。
でもあたしが好きなのはあなただけ。

つきあいたいなんて大それた事は考えてないけど…でも他の男と付き合うのは嫌なのよ。





──今日ね、放課後話があるんだけど、会える?

ある日突然来たそんな短いメールでアリスは舞い上がった。

だって好きな相手からのメールだ。

──ええ、もちろんよ。

と、大急ぎで返事を返すと、じゃあ…と指定されたのはオシャレなカフェ。

1歳年上の幼馴染フランシスはアリスみたいな冴えない女の子との待ち合わせだとしても、クラスの男子達みたいに手軽にマックなんかで済ましたりしないのだ。

オシャレで優しいフランシス。

アリスとアーサーの双子が生まれた時には隣に住んでいた優しく素敵な幼馴染。

そして…現在進行形でアリスの初恋の相手である。

ふわさらな蜂蜜色の髪に海のように綺麗な青い瞳。
小さい頃はお姫様のように愛らしくて、10代も後半になった今はおとぎ話の王子様のように美しい。

ファッションセンスだってすごく良くて、私服はもちろん、制服だってオシャレに着こなしている。

そんな素敵な相手とオシャレな店で待ち合わせ…
女の子なら浮かれないわけはない。

だけど……

はぁ…と、アリスは我が身を振り返った。


親の趣味で双子の兄のアーサーと揃って放り込まれた、制服が可愛いと評判のミッションスクール。

真っ白なブラウスと、裾に金の刺繍の入った黒いAラインのハイウェストのジャンパースカート。
それに黒いケープを羽織って、頭にはベレー帽。
男子は同じ色合いのシャツにジレー、それにスラックスだ。

が、正直、その可愛らしい女子の制服は自分には似合わない…と、アリスは思っている。
むしろ双子の兄のアーサーの方がよほど似合う。

アーサーは可愛い。
アリスは可愛い兄が大好きだが、同時に可愛い兄が好きではない。
彼はアリスの自慢であり、コンプレックスなのだ。

そもそもが双子と言っても2人は男女の双子なので2卵性。
だから、似ているがそっくりというわけではわけではない。

髪の色からして、アーサーは綺麗な金色だが、アリスの髪は少しくすんでいて、瞳の色だってアーサーは春の新緑のように淡く綺麗なグリーンなのに、アリスの瞳はまるで藻がはびこった沼のような濃い緑だ。

睫毛だって長く濃いのは2人とも同じだが、アーサーのは何もしていなくてもクルンと綺麗なカーブを描いていてお人形さんのようだし、切れ長で吊り目がちなためキツく見えがちなアリスと違って、アーサーはやや吊り目がちではあるが優しい丸い目をしている。

身長だけは同じ165cm
女の子にしては高く、男の子にしては小さい。

だから新しい制服が届いた日、アーサーに無理を言って着てみてもらったら自分より遥かに可愛らしくて、それに秘かにショックを受けて、その夜はそれを着て学校に行くのが嫌すぎて泣き明かした。

その時は、今更…そう、今更じゃない…と、立ち直ったのではあるが……



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