のっと・フェイク!verぷえ_第四章_1

お子様騒動

「君んとこの子どもはなんだいっ?!
客を足蹴にするように躾けているのかいっ?!!」


あれから10年ほど後……双子は外見年齢、幼児くらいには育っている。
妖精さんいわく、これからはもっと成長がゆっくりになるらしい。
まあ親も長い時を生きる国体なので

双子は双子と言っても二卵性双生児で、しかも男女と性別が違うためか、あまり似ているところはない。

相変わらずアポなしで押しかけて来たアメリカの手の中には女の子、アリス。
抱っこされたまま泣きじゃくっている。

そしてその足元には男の子、フリッツが険しい顔で

「アリスを放せっ!!このメタボっ!!!」
と、ゲシゲシとアメリカに蹴りをいれていた。


「アメリカ、アリスをこちらへ。
あと、フリッツ、暴力はいけないぞ」

と、キッチンから戻ってきて慣れた様子で手を差し出すドイツに向かってアリスはその小さな手を伸ばすが、アメリカはアリスをしっかり抱っこしたまま渡そうとしない。

一方で注意されたフリッツは、こちらもやめる気配はなく、

「だって、こいつアリスを無理矢理だき上げて泣かせてる悪い奴だぞっ!!」
と、不満げに頬を膨らませた。

ドイツはそれに苦笑。

「フリッツはアリスのお兄ちゃんでナイトだもんな」
と、今度は同じくキッチンから出て来たイギリスが、エプロンで濡れた手を拭いたあとにそう言ってフリッツの頭を撫でると得意げに頷くフリッツを見て、

「君…相変わらず子どもに甘すぎるんじゃないかい?」
と、アメリカは恨めしげな顔をするが、

「その代表格がお前だよな。
大丈夫。フリッツはちゃんと厳しくは育ててる。
妹を誘拐するお前が悪い」

と、さらにキッチンから出て来たプロイセンが、こちらは有無を言わさずアメリカの手の中からアリスを救出し、耳に痛い事を容赦なく言い放った。


そうしておいて、プロイセンは
「ほら、もうファティがだいてるんだから、泣きやめよ、お姫さん」

と、小さな手をぎゅうっと自分の首に回してひっくひっくとシャクリをあげる愛娘のふっくらした頬に口づけを落とすが、しがみついて泣く娘の口から

「ムッティみたいな髪や目だったら可愛かったってっ……フリッツは綺麗な色なのにっ……」
という言葉が出ると、ヒクリと顔をひきつらせた。

そしてアリスを片手で抱いたまま、自分の足を指さしてフリッツに言う。

「フリッツ、お前の身長でアメリカを狙うならここな?脛。
ここ攻撃すっと、骨がすぐそこにあるから激痛が走る」

その父親のアドバイスに息子は真剣な顔で頷くと、アメリカの足の一点を険しい目で凝視し、アメリカは悲鳴をあげて距離を取った。



そうして息子の方に対する要件は終わったとばかりに、プロイセンは今度は娘の背をぽんぽんと宥めるように軽く叩きながら、ソファに座る。

そこで娘の身体を少し離して視線を合わせ、にこっと笑いかけた。

「アリスは…ファティの事は嫌いか?」

自分と同じ色合いのアリスの頭を撫でながらそう聞くと、アリスはふるふると首を横に振って

「大好きよ。ファティ大好き」
と、真剣な表情で言う。

その答えにプロイセンが
「なら、大好きなファティと同じ髪や目じゃダメか?」

と、たたみかけると、アリスは初めてそれに気づいたと言った様子で泣きやんで、大きなまるい目をさらにまんまるく見開いた。


その表情は驚いた時のイギリスにそっくりで、

「まあ今のお前の顔や表情、ムッティにそっくりだけどな」
と、笑うと、アリスは

「ファティもムッティも大好きっ!!」
と、またぎゅっとプロイセンにだきついたのだった。




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