のっと・フェイク!verぷえ_第二章_2

──…死にたい……

可愛らしいベビーグッズに囲まれた未来の子供部屋…
クマのぬいぐるみの大軍は、イギリスの兄弟達とドイツからだ。
本当にクマで軍隊でも作るかと言いたくなるようなクマ軍団の中で、ひときわ大きなクマを抱えて、プロイセンの大切なイギリスが泣いている。

まあ…子どもが出来てからは情緒不安定気味で、こんな風になるのは初めてではない。

…というか、しょっちゅうこうして泣くわけなのだが、だからと言ってイギリスの夫であり腹の子の父親であるプロイセンがそれを聞き流せるわけもないのだ。

「俺様のお姫さんはどうしたんだよ?
大事な大事な伴侶と大事な大事な子ども、両方守れずに死なせたら、俺様気が狂うぜ?
なあ、なにがそんなに悲しいんだ?
俺様、何でもしてやるから、言えよ」

クマをだきしめるイギリスを後ろからクマごとだきしめて、その黄色い後頭部にちゅっちゅっと口づけながら言うプロイセンを振り返ると、イギリスは涙でいっぱいの目ですがるようにプロイセンを見あげた。

そして言う。

──…赤ん坊…男だったらどうしよう?


は?と聞き返しかけて、そして室内を見て納得する。

一面ピンク、ピンク、ピンクの嵐。


ほぼ親族のプレゼントで埋め尽くされたベビールーム。
まず報告しに行った時にいきなりプロイセンをガン無視で女の子の名前を列挙し始めた通り、男ばかりの下の兄弟に泣いたスコットランドは熱烈女児希望。

そして当然送ってくるベビー用品は全て女児用だ。

まず部屋を見に来て、それから自国に戻って祝いの品々を届けて来たプロイセン自身の弟ドイツは、単にピンクで埋め尽くされた部屋を見て、そういうものかと思って送ってきただけで、深い意味はないのだと思う。

こうして一面ピンクで埋め尽くされた部屋の中で、わずかに混じる白や黄色は
「男の子さんでも女の子さんでも問題ないようにと思いまして」
と、さすがにみかけは若くとも伊達に自分たちより遥かに長くは生きてはいない世界でも有数の空気を読む国、日本の贈り物である。

ともあれ、このピンクの空間に、もし子どもが男だったら…と不安になるのは無理もない。

「俺様は男でも女でもアルトとの子なら嬉しいけどな…」
と、フォローを入れつつも、問題はそこではないことはプロイセンもわかっている。

親以外の周りに歓迎されない、社会に歓迎されない…それをイギリスは恐れている。

自分は周りに好かれていない、そんな好かれていない自分の子だから普通に好かれない、そんな風に思っていて、好かれない辛さを常に感じているだけに、自分の子がそんな思いをしたら…という気持ちが強いのだ。

もっとも…その、イギリスが好かれていないと言う事自体が誤解だったりするのだが…。


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