森の国自体がただの小国なはずだし、自分はその小国のさらに価値のない側室の腹の子どもなのだが……
「俺様は…お姫さんを他国にやりたくねえ。
ここに置いておきてえんだ。
でもなんつ~か…女子どもに好かれる人間じゃねえし?
ちょっとここにいて楽しいって思えるイベントをすれば、お姫さんがここにいてえって思ってくれるかなぁなんて、点数稼ごうとして焦って、天気も見ずに連れ出しちまってこれなわけだ。
ほんと、ごめんな」
眉尻を下げて肩を落とすギルベルト。
「俺は…俺が選べるならここに居たい。
風の国って知らないのもあるけど……」
「あるけど?」
と、そこで切ると聞き返して来る。
そこでアーサーは手紙をヒラヒラと振りかざした。
「臭い。
こういうのが文化的でおしゃれなのかもしれないけど…この手紙、すごく匂いがきついし、書いてある言葉もなんかそんな感じで……」
そう、なんとなく好きになれそうな気がしてこない、そう言うと、ギルベルトはプスっと吹きだした。
「陛下?」
「いや、エリザも同じ事言ってたから。
そっか。もしお姫さんがここに居たいって言ってくれるなら、俺様は全力で風の王の申し出は拒否するからな」
ぎゅうっとだきしめてくるギルベルトからも香水の匂いがしないわけではないが、それはギルベルト自身の体臭と入り混じってふんわりと鼻孔をくすぐる程度で、すん、と、吸い込むと、なんだかホッと安心できる。
ここに居たい…そう言う事が許されるなら、アーサーがそう言わないなんて事はありうるわけがないのである。
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