フェイク!verぷえ_第三章_5

そう、今日は世界会議と言う事もあって各国が集まって来た。
その中にはもちろんアメリカもフランスもいる。

というか、結婚報告ハガキ効果だろうか。
一言二言申したそうな輩が、いつもよりも早く会議場入りをしている。

そんな中、非常に不機嫌にハガキを握り締めて会議場入りしたアメリカは、ドアを開けて入るなり

「くたばれっ!イギリス!!」の通常運転である。



それにちょっと低くなる室温。

後ろのプロイセンが一歩出ようとするのを制して、イギリスは自らが一歩アメリカの方へと足を踏み出した。

そしてにこやかに微笑む。

「良い大人が仕事先でする挨拶じゃないぞ?」

普段なら罵声には罵声で返してしまうところなのだが、後ろに守ってくれる誰かが控えている、それだけでこんなに余裕が出る。


もちろんイギリスに余裕があったって、穏やかに返したって、それでアメリカが己の言動を振り返るなんて事はない。

それに対して当たり前に

「別に結婚したいなら、俺だって良いじゃないかっ!
というか、君、昔から俺の事大好きなんだから、むしろ俺の方が良いだろうっ!!」
と返して来る。

ああ、確かにそんな風に半分涙目で膨れている様子は、幼いころを彷彿させて可愛らしいと思う。

これが小さい頃のアメリカだったら、『ああ、そうだな』と頭を撫でてやるところなのだが、相手はもう大人なのだから、そんな親愛に満ちたごまかしをしても仕方がない。

それよりもはっきり可能性が皆無な事を伝えて、より良い道へと方向展開させてやるのが思いやりだ。

だからこそ言う。

「ああ、確かにお前の事は好きだ。
育て子が嫌いと言うやつはいないと思う。
けどな、伴侶と言う意味でなら別だ。
そう言う意味ではお前は全く好みじゃないんだ。
俺は幼い頃から厳しい状況で生き抜く事を余儀なくされて育って来たからな。
今でも仕事の場では老大国として節度と責任を求められる。
だからこそ、プライベートで常に一緒の相手は、甘やかしてくれるお兄ちゃんが良い。
俺だって甘えたい。
プライベートでまで『くたばれ!』とか言われながら、相手を気づかって暮らしたくはない」

おお~!!…と若干離れたところであがる驚きの声は、日本のものだろう。

そちらの方向からは、何組かの熱い視線。
何やら相談し合う声とペンを走らせる音。
声の主は台湾とハンガリーとみた。

別方向からは感極まったような啜り泣きと、小さな『ありがとうございます、ありがとうございます』の声。

それは間違いようのないカナダの声だ。
メープル柄のハンカチで目元を押さえながら、プロイセンに向かって遠くから頭を下げている。
いつでもイギリスの幸せを願ってくれている出来た弟である。

おおむね好意的な周りの反応。

そこで参戦してきたのは、言わずと知れた腐れ縁、フランスだ。

「本当に…仕方ない子だね。
甘えたいならお兄さんがいくらでも甘やかしてあげてたでしょ。
坊ちゃんのお兄さんときたら、俺じゃない?」

そんな事を言いながら近づいてくるその顔には容赦ない足蹴り。

「俺をやたらと落とす二大巨頭が何を言ってやがる。
言っておくけどな、プロイセンは俺を落としてきた事はねえ。
国として敵対しているさなかでも、俺個人に対しては心配はしても貶した事も否定した事もねえんだよっ!」

──…だから…安心して甘えられんだ……ばかぁ……

と、最後はさすがに恥ずかしくなって声のトーンが落ちると、後ろから大きな手がくしゃると頭を撫でて

「よく言えた」
の声が降ってくる。


そして今度はプロイセンが一歩前へ。

「ってことでな、俺様は自宅警備員からめでたくアルト身辺警備員にステップアップしたんで、心身ともにアルトに危害を加えてくるやつは容赦なく排斥させてもらうから、そのつもりで」

と、にやり。


「じゃ、そういうことで、これからは世界会議ん時とかはアルトに随行するんでよろしくな~」
と、イギリスを席に誘導しながら、他にも着席を促した。




Before <<<  >>> Next (5月22日0時公開)


0 件のコメント :

コメントを投稿