鞄を後部座席に放り込み、運転席でシートベルトを付けてエンジンをいれた瞬間、震える電話。
「オーラ、親分やで」
相手を確認して出た電話。
かけてきたのは先ほど記者会見に乱入した祈愛だ。
開口一番言われた言葉は
『あれでとりあえず収まったと思うし、天使ちゃんと多少ベタベタしてても、周りの需要に応えてというのもあるんだなって見方もしてくれるようになったと思うんだけど、実はあれ全部嘘だから、気をつけてね、トーニョ』
…え?と、アントーニョの顔から笑みが消える。
そして誰が聞いているわけでもないのに、自然に声が低く小さくなった。
「それ…どういう意味なん?」
と、声を潜めて聞くと、祈愛は若干固い声で、やはり少しトーンを押さえて、アントーニョからするとなかなか衝撃的な事実を伝えてくる。
『あたしがウェンズディの記者と飲みに行ったのはホントだけど、トーニョ達の話題は出してないってこと。
だからあたし以外の誰かがあたしかトーニョか天使ちゃん、誰かを貶めようとして例の噂ながしたってことよ』
「なん…え?誰が?どうして?」
『そこまではあたしだって知らないし、知ってたらそっちに凸するなり手を打つなりしてるわよ。
とりあえず今回の方向ではこれ以上どうもできないと思うけど、他のやり方で何かしてくるかもしれないし、用心だけはしておいた方が良いって思って電話したの』
確かに…嘘ではないだろう。
今回の事に関しては結果的には祈愛が一番ダメージを受けている。
ここで嘘をついても祈愛には何の得もない。
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