だから付き合いが長いのもあってなんとなく感じる。
(こいつ…なんか機嫌悪くね?)
だがそれを相談しようにも、そう言う事に鈍い以前に興味のないものはまるっとスルーする主義のスペインは聞きはしないだろうし、他の国は気づかないだろう。
この微妙な空気に気づくとしたら、空気を読むことにかけては世界一の某東の島国あたりだが、あいにく彼はこちらも何故か不機嫌な超大国のお守りで忙しいようだ。
(…あと気づくとしたら……)
と、プロイセンの脳内に浮かぶのはフランスの腐れ縁。
こちらも位置は西の端だが島国だ。
しかし彼、イギリスとてこんな面倒くさい状態になったフランスを好き好んで引き取ってはくれないだろう。
はぁ…とため息が出る。
さてどうしようか…と、いい加減自分の忍耐も限界に近付きつつあったプロイセンが手にしたジョッキに視線を落とした時、いきなり後ろに気配を感じた。
プロイセンもだいぶ衰えたとは言え元軍国だ。
そんな彼の後ろを取る事ができる国はまあ限られている。
小柄で…策略を得意とする老大国…
今まさに考えていたその島国だろうと見当をつけると、案の定、
「オイタしねえで良い子にしてたみたいだな、ダーリン?
どこかのクソヒゲやクソトマトと一緒に女ひっかけに行ってたら、そのテクはすげえ惜しいけど、潰さねえとなんないとこだった」
と、聞き覚えのある声が降って来て、ジョッキを握った自分の手に自分より一回り小さな白い手が重ねられた。
そしてそのままジョッキの持ち手から手を放させられる。
「…あ~…イギリス」
正直何を言われているのかはわからない。
ただ振り返って見あげれば、珍しくほぼ飲んでないらしく、はっきりと理性の感じられる目が意味ありげな視線を送って来ている事に気付いた。
「せっかく会議終わってゆっくりできると思ったら、馬鹿2人に拉致られてるし?
探して回った分はサービスしろよ?」
という台詞に戸惑うものの、淡いグリーンの瞳の奥深くを覗き込めば一片の悪意も感じられない。
何故だかはわからないが、イギリスはどうやら自分を救出しに来てくれたらしい。
そのことを瞬時に理解すると、プロイセンはありがたくその話に乗らせてもらう事にした。
なので、その言葉に応じるようにプロイセンは
「悪い。お前が来るまでの時間潰しのつもりだったんだけど…ホントごめんな?」
と、素直に立ち上がってイギリスの横に立ち、そのままの勢いで退出しようとする。
しかしそこで、
「ちょっと待ってっ!!」
と、実に珍しくわかりやすく焦った様子のフランスにいきなり腕を掴まれた。
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