水はまだ冷たく、波も緩やかとは言い難い。
早く見つけてやらなければ……と気持ちが急くものの、落下の衝撃と水の冷たさで手足が思うように動かない。
それでも必死に愛しい子の姿を求めて、ギルベルトは深く海へもぐった。
ちきしょうっ!…どこだっ!!!
守ってやると心に誓ってそう経ってないのにこれだ…
本当に本当に、守ってやりたいと思っているのに、少し目を離すとこうやって手の中をすり抜けていってしまう。
大人しく守られてくれよ、本当にっ!!
と思ってみても仕方ない。
とにかく探して捕まえるしかない。
苦しいのは呼吸なのか心なのか、もうよくわからない。
ただただ苦しい。
それでも諦めるという選択はギルベルトの脳内にはなかった。
呼吸が苦しくても冷たい水に手足がしびれてきても、ひたすらあの白い姿を探し続けた。
守るべき相手を守れないなら、助けられないくらいなら、このまま溺れ死んだ方がいい。
自分が冷たいと感じると言う事は、あの少年だって冷たいはずだ。
自分よりずっとずっと華奢で丈夫ではないあの子を一刻も早くここから助けだしてやらねば…
焦る心。
しかし自分が焦って溺れでもしたら、あの子を助ける事ができなくなる。
それはダメだ。
冷静になれ…冷静に……
ギルベルトは気を静めるように静かに目を閉じ、呼吸を整え、再度目を開いてあたりを見回す。
──いたっ!!!
少し離れた波間にふわりふわりと揺れる白。
それに向かって一心に泳いだ。
そうしてあと少しとなったところで思い切り手を伸ばす。
左手に細い腕の感触。
それをグイッと引き寄せて、その小さな身体を自分の胸元にしっかりと抱え込んでホッと息をつくと、ギルベルトは今度は水上を目指して上へ上へと泳いでいった。
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