悪友キッチン
「さ～今日も行くわよ～！」
「トーニョ、フラン、ギルの悪友キッチ～ン☆」
今日の収録は料理番組である。
姐さんこと、サバサバしたキャラで人気の女優エリザベータにツッコミをいれられながら、週替りでアントーニョが日常の食事用の簡単料理を、フランシスがおもてなし料理を、ギルベルトが弁当を作るという番組だ。
最初のエリザベータの掛け声のあと、3人してにこやかに番組タイトルを叫びながら飛び出してくると、スタジオがきゃ～！！というファンの歓声に包まれる。
そして…最後にフライパンの玩具を振り回して出てくるエリザに笑いがこぼれた。
同じ事務所の仲間で子役時代からの幼なじみとも言える4人組でやるこの番組も3年目に突入するが、この番組でツッコミ用のハリセンのかわりにエリザが持つこのフライパンの玩具は、もう彼女のトレードマークと化していて、他のバラエティ番組でも必ずと言っていいほど手にしている。
「姐さん、素敵～ｖｖ」
と、男性アイドル3人と多く共演しながら3人のファンに嫌われずにいるのは、エリザベータの性格もさることながら、この色っぽい雰囲気など作らせないアイテムと、本人が常々、新進気鋭の若手ピアニスト、ローデリヒ・エーデルシュタインの大ファンで自分の中の愛情の全ては彼に向けられていると公言してやまないためである。
むしろ3人が他の女性アイドルと噂などたつと、辛口なからかいと共に否定をしてくれるので、悪友ファンの愛すべきお姉さんとして確固たる地位を築いていた。
そして今日も軽快なおしゃべりと共に、イジられながらも手だけは器用に動かして行くギルベルト。
それをさりげなくフォローし、手伝うフランシスの横では、アントーニョがヒョイパクッヒョイバクッとつまみ食いに勤しんで笑いを誘っている。
「あんたもやんなさいっ！」
と、スパ～ン！とフライパンで殴られるアントーニョ。
「やって～。親分お腹すいてんねん」
と訴えるアントーニョの肩にポン！と手を置いて、
「やめて、トーニョ。俺達アイドルだからっ！欠食児童でもコメディアンでもないからっ」
とフランシスがハンカチ片手に泣き崩れるフリはもうお約束。様式美だ。
しかしそんなフランシスを全く微塵も欠片も気にすること無く、
「あ、それよりエリザちゃん、親分お願いがあんねんけどっ！」
と、目をキラキラ輝かせるアントーニョ。
スルーされてハンカチを噛むフラン。
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