このあたりももうお約束で、どこまでが台本でどこまでがアドリブなのかは長年この番組を見続けているファンでもわからない。
「もうやだトーニョ。あんたって本気で台本ガン無視で何言うかわかんないから」
と腰に両手を当てて言うエリザの言葉は果たしてアドリブなのか台本なのか…。
「ま、いいわ。やばいこと言ったらカットよろしくねっ」
と、エリザがチラリとスタッフに合図を送ると、スタッフが大きく手で頭上に丸を作って、また会場内が笑いがあふれる。
「OK出たからいいわよ。言ってみなさいっ」
と上から見下ろすエリザベータだったが、次のアントーニョの台詞で固まった。
すっぽ~ん!とギルベルトが切っていた人参の頭の部分が滑って宙を舞った。
エリザベータは固まって、フランシスは手にしたハンカチを落とす。
慌ててカメラマンがプロデューサーに視線を送るが、カメラを止めろという指示は出ない。
その代わり、プロデューサーからエリザベータに続けろの指示がボードで出された。
「ちょ、あんたそれ言っちゃう?それってまだ発表前なんじゃないのっ?!」
どうやら台本ではなく、本気でアントーニョの暴走らしい。
それでも即硬直をといて話を進めるエリザベータはプロだ。
「え~、やって、あの子一人置いとくの心配やん」
ぶ~と頬を膨らませるアントーニョにざわめきと悲鳴が客席から上がる。
そこで、ギルベルトがダン!と包丁を置いて、
「フラン、やっとけ」
と、料理をフランシスに振って前へ出る。
「お~い、皆、近日中に正式発表あると思うけど、これはまだここにいる皆だけの秘密な~。
…返事はぁ~?!!」
「は~いっ!!」
淡々と言うギルベルトの言葉に、ファン達は落ち着きを取り戻して、お行儀よく手をあげて返事をする。
「よ~し、良い子だ。さすが俺様のファンだ」
にこりと笑うギルベルトに嬌声をあげるファン達。
こういう仕切りはいつもギルベルトの仕事なのである。
「実は数日前に例のドラマのオーディションあったんだけどな、俺ら面白半分にトーニョにいたずら仕掛けてみたんだ。」
いきなり始めるギルベルトにエリザがぎょっとした顔で言う。
「え?それしゃべっちゃうの?」
「おうっ。大丈夫。
俺様のファンはちゃんとしてっからな。問題起こすような事はしねえよ。
な~みんな、そうだろ~?!!」
にこやかに手を振られて、
「そうだよ~~!!!」
と嬉しそうに声を揃えるファン達。
そのあたりは統率されている。
「よっしゃ、続けるぞっ」
とギルベルトは満足気にうなづいて続けた。
「で、そのいたずらってのが、フランの幼なじみの15歳の男の子をだな、一人こっそり候補者に紛れ込ませておいたわけよ。
みんなあいつが数年前までは美少女だったの知ってっだろ?
だから気付かなかったら面白えな~って事だったんだけどよっ」
と、そこまで話した時点で沸き起こる爆笑の渦。
うっそ~、まじぃ~など口々に言い合うファン達。
「驚くのはまだ早いぜっ!
トーニョのやつ、気づかないどころか、その子が良いとか言い出しやがった」
ウワッハハ~~!!!!
と先ほどにもまして笑い転げるファン達。
Before <<< >>> Next
0 件のコメント :
コメントを投稿