ヒロイン絶賛募集中07


ヒロインは美少年


…ああ…面倒くさぁ……

土曜日…通常の会社員なら楽しく朝寝を楽しむこともあるであろう8時からすでに2時間。

アントーニョだって休みならのんびり朝食を取ったあと、趣味の家庭菜園にでも勤しんでいる時間である。


もうええやん、祈愛で。
演技は下手やけどどうせ台詞もない敵から逃げる時に抱えられとるだけの役やし。

胸大きいし、夜の方はまあまあやったしな。



仕事は嫌いではないが、こういう相手役選びとかは好きではない。

面倒だ。

スタッフが全部決めておいてくれればいいのに…と思いつつ、アントーニョは一応人気アイドルであることだし、仕事なので、退屈な顔も出来ずあくびを噛み殺す。



まあ今回はそんなやる気のないアントーニョのために悪友二人がちょっとしたいたずらをしておいてくれたらしい。

候補者の中に15歳の少年を女装させて一人紛れ込ませておいたらしいのだ。


『お兄さんの幼なじみだけどね、めっちゃ可愛い子だよ♪』

ぱちこ~ん☆とウィンクをする悪友は、今でこそだいぶ大人の男の骨格になりつつあるが、数年前までは本当に美少女のようだった。

幸いにして口のきけない少女の役なので、しゃべらないし、しゃべらせない。

そういうオーディションではあるので、今回のイタズラにはうってつけだ。

もちろん悪友達が純粋にアントーニョのためだけにそんな事をするはずもなく、実はオーディションの終わりまでにわかったら悪友達が、わからなかったらアントーニョが食事をおごるという賭け付きなのではあるが…。



さて、これで何人目だ。

そろそろ半数、1ダースを数える候補者に会っているが、今までの中にはいたのだろうか…。


「はい、次の方…」

スタッフの声にダラリと椅子に持たれていた姿勢を慌てて正す。

ガチャリと開くドア。

通常なら『お願いします』だの『◯◯です。』だの自己紹介とか挨拶とかから入るのだが、今回は口がきけない少女という役の特色を重視して、一切声を出さないでアピールという事になっている。


だからまあ…演技の指示をされるまでは皆同じ反応なわけだが…。



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