寮生はプリンセスがお好き6章_1

昨日の夕食と違って、ひどく騒がしい朝食時…

常にクールな金竜寮コンビは別として、銀竜寮の寮長と副寮長の2人は寝不足気味の目で寄りそっているし、物理は最強だがホラーが苦手な金狼寮のプリンセスは涙目なのに元気に大騒ぎ。
そしておそらくお化けよりは自寮のプリンセスに寝かせてもらえなかったのだろう。
金狼寮の寮長の香は寝不足気味の目でうんざりした表情を浮かべている。

「…自分らなんだかすげえすっきりしてる感じ?」
と、ため息交じりに言われれば、自分自身はそれほどすっきりしているわけでもないギルベルトにしてみると苦笑いだが、確かにお姫様は怯えるでも寝不足になるでもなくにこにこしているので、そう見えるのだろう。
そして、重要なのは自分よりもプリンセスの機嫌である。

「あ~…まあな。
俺らんとこは先輩達も脅さずにまわれ右して帰ったみてえだから?」
と、昨夜解散後にあったのであろうお化け騒動は、もう絶対に3年生寮長組の仕業だと分かっている前提で語れば、

「…すげえ。来る前に追い払った的な?」
と、わりあいと何に対しても淡々と応じる香も目を丸くした。


――正確には…たぶん部屋の前で帰ったんだろうな……
と、それに直接は答えず脳内でそう思って、ギルベルトは遠い目になる。

そう、昨日は解散まで散々脅されたせいで怯えるアーサーに『幽霊は色事が苦手だって言うよな』と、ワイ談でもして過ごそうかと思って言ったら、それならキスしていれば色っぽい行為とみなされてこないのでは?といきなり口づけられて、一瞬理性がログアウトして、口づけを深くしたら勃ってしまったらしい。

そのくせ自分で処理の仕方がわからないというついこの前まで小学生だったお姫様の処理を手伝ってやったのだが……声が色っぽかった。
もう、自分が色っぽい事が苦手なお化けなら確実に風の速さで遁走する色っぽさ。

おそらく3年生寮長のどちらかはそのあたりの時間に来て、勘違いして引き返したのだろう。

まあ…引き返さずにドアを開けてお姫様のあられもない姿なんか見た日には、間違いなく今頃こんな風に和やかに朝食を摂れる状態にはしておかない。
その場で沈めて朝に使用人達が乗ってくる船で緊急入院する事になっているだろうが…


そんな微妙な空気の中で全員揃って朝食。
その後は自由行動。

(…まあ…どうせ怖がらせるために考えた先輩達のデマだろうが……)
と思いつつも、プリンセスを連れた寮長としては、その身の安全には細心の注意を図らなければならない。


なので、ギルベルトはくれぐれも…と言いつつアーサーを銀竜寮組に預けて、1人、3年の寮長組の話に出て来たバルコニーを調べに出た。


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