「さすがに寮長達は動じなかったけど、金竜以外のプリンセス達は結構びびってたよなっ!」
夕食を終えて全員を私室に送ったあと、双方プリンセスは寮に置いてきたため同じ部屋に泊まる事になった金銀虎寮の寮長、カインとユーシスは自室で盛り上がっていた。
幽霊を模した仮装をして各部屋を訪ね、脅かして撤退。
そのために色々仕掛けも考えた。
一日目はそうやってお化けの存在を印象付けて、二日目にはお姫様達に攫われてもらって、寮長達にはせいぜい慌ててもらおう、そんな計画である。
ということで、カインは金竜、金狼、ユーシスは銀竜、銀狼を脅す予定だ。
そう…予定だったのだ……。
「んじゃ、頑張れよ~。軍曹にばれて殺されねえようになっ!」
ヒラヒラと黒いマントを翻しながら笑うカイン。
「それマジ笑えねえし」
とユーシスは冗談とわかっていても青くなる。
直接的に手を出さなくても、大事な大事なお姫様を怖がらせた事は万死に値するとかで手打ちにされたらどうしよう…そんな事を考えながら、まずは大変な方から…と、ユーシスは1年の銀狼寮の2人の部屋へと向かう。
まずは不気味な音声を部屋の奥のスピーカーから流してそちらに確認しに向かったところでドアを開けて姿を現し、そして消える。
一日目だからそれだけだ。
下手に出歩かれたらバレる可能性があるため、絶対に部屋から出ないように言っておいたが念のため、2人がちゃんと部屋に居るか、室内にしかけた盗聴器の音声をオンにしてみた。
…ん…んぅ…あ…あぁっ!!!
へ?
俺なんだか疲れてる?
と、ユーシスはそこから流れてくる甘く高い声に首をかしげる。
そしてさらに耳をすませた。
…やっ…やぁっ…も…出ちゃ…ギルっ…出ちゃうっ!!!
俺の俺が困った事になってます………
そっと音声を切ったユーシスだが、すでに手遅れ。
…ここで抜いたら…さすがにバレるか?
ユーシスは前かがみになりながらソッとその場を離れて自室に撤退。
幸い金側の寮の後輩を脅しに行ったカインはまだ帰っていないので、ソッと抜く。
軍曹の可愛いお姫さんの“アノ”時の可愛い声なんか聞いて、あまつさえオカズにしたなんて知れたらおそらく殺される…。
今回は撤退できたわけなのだが、もしまだヤっていたら……ていうか、お前らこんなとこで何やっているんだ?
ヤってる最中に本当に幽霊出たらどうすんだよ?
てか、ここに来てる2泊3日の間くらい我慢できないレベルでヤリまくってんのか?
…と、先輩主張したいよ?
と、ソッと心の中で抗議をするが、バレたら人生終わる気がするので触らぬ神に祟りなしだ。
銀狼寮は諦めて、銀竜寮の後輩達にお化けの存在を宣伝してもらおう…
そんな挫折感に苛まれた気分で、ユーシスは銀竜寮の後輩達を脅しに行ったのである。
なかなか睡眠不足な人間が続出の夜が明け、そして朝……
「お化けでなかったなっ。
な、ギル、やっぱりあれって色っぽい事…なのか?」
晴ればれとした顔で聞いてくるお姫さんになんて答えるべきなんだろうか…と、ギルベルトは朝っぱらからどこか頭の痛くなるような悩みを抱えつつ首をかしげた。
「あー…色っぽいこと…に入る…のか?」
微妙に自信がない。
だって別にギルベルト的に色っぽい何かがあったわけじゃない。
性教育を受けずに第二次性徴を迎えてしまって戸惑うお子様の処理を手伝っただけだ。
いや…でも精通させるところで止めただけで、出せるまでにいたしたことは、普通に女性との性交時と変わらなかった気がするのだが……
「あーうん…まあ入るかもな」
疑問形を肯定形に変更修正すれば、
「じゃあ、ギルが言ってたお化けは色っぽい事が苦手って本当だったんだなっ」
さすがギル!とばかりにキラキラとした目でそう言って笑顔を浮かべるプリンセス。
朝食時に寝不足気味のプリンセス達がそれぞれ口にするお化けの襲来と、その横でそれをなだめていた寮長達の眠そうな様子を見て、さらに得意げな顔になる。
そしてその中でどこか気まずそうな顔でこちら側…もっと言うならばアーサーの方をチラチラと見ながらやや顔を赤くするユーシスに気づいて、(なるほどな…そういうことか…)と、ギルベルトは1人内心事情を察した。
寮長副寮長交流イベント二日目の朝の事である。
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