The escape from the crazy love_4_1

家族生活

年齢的に小さい子というわけではなかったが、まるで小さい子どもを引き取ったようだった。
何がと言えば危なっかしさが…と言うしかない。

病院から帰って7日。

熱は薬が効いたのかその日に下がったものの、まだ青い顔でふらふらしているうちからもうベッドを抜けだそうとするイギリスを捕まえては戻してを繰り返し、その後小康を取り戻したところでなんとかかんとか床上げをしたのは良いが、大人しくソファで刺繍でもしていろといっても気づいたらイギリスは雑巾を手に窓を拭いたり掃き掃除をしたりとクルクル動き回っている。

まだやつれた青い顔でそんな風に働かせたいわけじゃない。
手の内でゆっくり休んでいて欲しい。
無理をさせたくない。
倒れでもしたらと思うと何も手につかない。

ロマーノが子どもの頃にはとにかく何でもいいから働く習慣をつけさせようと必至だったものだが、こんなふうに弱ってる身体を酷使するように働かれるよりは、多少ぐうたらしててくれたほうが安心だったかも…と、スペインは思った。

まあ…多少は…ではあるが。

そんな事を思うにつれ余計に、あの当時ロマーノと一緒にこの子を引き取っていたら楽しかっただろうな…と、そんな想像が頭をしめる。


隙があったらサボろうとするロマーノも、こんな衰弱した状態でも働こうとする自分と同じ年頃の子が身近にいれば、実は優しい子だけに自分が代わりにと思ったかもしれないし、そんなロマーノが身近にいれば、この子も何かに憑かれたように働き続けなかったかもしれない。

3人で一緒に掃除をして疲れたらイギリスとロマーノを両側に抱えてシェスタ。
ああ、楽園やったやろうなぁ…と、思う。

いや、今からでも遅くない。

休暇を終えて自宅へ戻ってもイギリスは手元に置いておいて、ロマーノを呼び寄せて引き合わせよう。
決して器用な性格ではないが逃げ足だけは超一流のロマーノから、イギリスもその逃げの手口を学べばいいのだ。

そんな事を考えながらスペインは今日もイギリスを追いかけて雑巾を取り上げる。


「そんなことせんでもええから、休んどき言うたやろ?」
そう言うと不安げな目を向けられて、思わずぎゅうっと抱きしめた。

「あんなぁ…掃除やったら親分がするさかいな?
アーティは熱下がってもまだ完全に元気になったわけやないねんで?
大事な大事な家族がまた具合悪なって倒れでもしたらと思うと親分生きた心地せえへんねん。
頼むわ…休んでおいて?」

そう言ってぎゅうぎゅう抱きしめると、苦しいっと不満気な声があがるが、こんなスキンシップにももう怯えた様子はない。
それに少しホッとした。

「親分な…色々大事なモンはあるんやけど、そんなかでいっちゃん大事なのは家族やねん。
自分の手の内におる家族は何があっても守ったりたいねん。
手の届くところで倒れられたりしたら悲しいわ」

と、そこで少し拘束する腕の力を緩めて言うと、腕の中でぼそぼそっと

「……そうまで言うなら…休んでてやる……」
とくぐもった声が聞こえて、思わず笑みが浮かぶ。

「おおきにな。じゃ、チュロス作ったから持って来たるわ」
座っとき?とスペインが声をかけるとイギリスは素直に座る。

チュロス…という言葉を聞いたとたんイギリスがピクリと反応したのを見逃さず、スペインは笑った。


日々餌付けが楽しい。
美味しそうに食べるイギリスの顔を見ていると幸せな気分になる。

昔はそんな感じだったロマーノは今ではすっかり料理上手になってしまって、下手をすると向こうの方がうまかったりするので、なおさらだ。

毎日今日は何を食べさせてやろうと考えるだけで幸せだ。




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