お化けは色っぽいことが嫌いか?
一行が古城についたのは夕方だった。
なんと城は湖の中央の小島に立っていて、そこまでは今度は船で行く。
(…これ…何かあっても逃げられないんじゃ?)
と、主催の3年組を除いた誰もが思い、青くなった。
おりしも湖は濃い霧に包まれていた。
そして10分ほど進むと霧の中にぼんやりと見えてくる古城。
長い間手入れをされていなかったというだけあって、周りは蔦に覆われている。
一見廃墟に見えるが、船を降りれば先に来て食事や部屋の準備を整えていたらしい使用人達に迎えられ、そこで一応廃墟ではない事に全員ホッとした。
重厚なドアを通り抜けて城内に入ると、どこかぞわりと悪寒がして、ギルベルトは大事なお姫様を改めて抱え込むようにその肩に腕を回す。
ここに来るまでに乗って来た飛行機の機内と違ってこちらは本当の火を使ったランプのみが光源で、それも薄気味悪さに拍車をかけた。
案内された部屋はそれぞれの寮の寮長と副寮長で2人一部屋。
まあ…こんな場所でお姫様と引き離されても困るので、それは助かる。
もちろん別室ならソファに寝る事になっても同室に陣取るつもりではあるが…。
食事は食堂で。
なのでその前に荷解きをする。
と言ってもおそらく主催側は何か企んでいるだろうし、いくらかは肌身離さず仕込んでおかなくては……
置いていくのは失くしても大丈夫なものだけ。
そう決めてギルベルトはライターやアーミーナイフ、絆創膏その他最低限の救急道具など諸々をこっそり上着や靴底など色々な場所に忍ばせておいたので、着替えの入ったバッグだけそのまま部屋に置いていく事にする。
「…お姫さんは支度良いのか?」
自分は本当にベッド脇に鞄を置くだけなので、ギルベルトはキョロキョロと室内を落ちつかない様子で見回すアーサーに声をかけると、振り向いたアーサーに向かって両手を広げた。
最初はなかなか慣れなかった人見知りのお姫様も、一緒に暮らし始めて3カ月強、一日のほとんどを一緒に過ごせばさすがに慣れて来て、ホッとしたようにポスンとギルベルトの腕の中におさまると、両手を腰に回して抱きついてくる。
怖いのか?と問うまでもなく、見あげるその大きな瞳が如実に不安を訴えているのがわかる。
だからギルベルトは安心させるように笑って言うのだ。
「俺様から離れなきゃ大丈夫。
俺様がいる限り絶対守ってやるから任せてくれ。
何しろ俺はお姫さん所有の1本の剣だからなっ」
そしてそれを聞いて安心したような微笑みを浮かべるアーサーをひょいっと横抱きに抱えあげて、
「じゃ、飯行くか。
足元悪そうだからこのまま運ぶな?」
と、上機嫌で部屋を出た。
0 件のコメント :
コメントを投稿