香の予想を裏切らず、
「で?今回の古城も何かいわくあるんだろ?」
と、どうやら脅かすためのネタフリをする銀虎寮の寮長ユーシス。
それに金虎寮の寮長で古城の提供者のカインが
「ああ…実はな…子どもができず側室を謀殺し続けた正妻を最終的に夫である領主が結果的に殺したんだが、その正妻の霊に呪われて自殺して、今でも霊となって出るらしい」
と、わざとらしく声をひそめて話し始めた。
まあ…金が出来れば今度は名が欲しくなるっていうやつだ。
いわゆる政略結婚てやつな。
ところが数年たっても正妻に子が出来ない。
子が生まれなければ家が滅んでしまう。
だから当たり前に領主は側室を迎え入れた。
そして1人目…数カ月後に子どもを身ごもったとわかった数日後…その側室は3階のバルコニーから落ちて死んだ。
最初は誰もが事故だと思った。
だがそれからまもなく迎え入れた2人目の側室は、1階のバルコニーに出たところで何故かすぐ側の大木の枝が折れて上から降ってきて、それが頭に突き刺さって死んだんだ。
側室が2人まで死んだところで、この城は呪われているという噂が広まって、相手が見つからず、領主は仕方なく村の平民の娘を3人目の側室に迎え入れた。
そしてその3人目の娘が身ごもった時、領主は目撃したんだ。
正妻がバルコニーで3人目の側室を殺そうとしているところを。
で、止めようと揉み合っているうちに今度は正妻がバルコニーから落ちて死んだ。
これで全てはめでたしめでたし…と言いたいところだが……その夜、領主の様子がおかしくなった。
ずっと正妻の名を呼んで城中をさまよい歩いて、使用人も自分の子を身ごもっている側室も、みんなみんな殺して回って、最後に自分も3階のバルコニーから飛び降りて死んでしまったんだ。
唯一の生存者だった家臣の1人が言うには、みんなを殺して回っている時の領主の後ろには、血まみれの正妻の姿が見えたらしい。
結局その唯一の生存者もすぐに気がふれて死んで、その後、城は他人の手に渡ったんだが、みんな夜になると城をさすらう領主の幽霊に怯えて手放して…ずっと放置されてたのを廃墟好きな俺の叔父が買い取って必要最低限だけ手を入れたってわけだ。
まあ…使用人達も夜は滞在したがらないんで、夕食は温めれば良いだけのモノを用意して夕方には帰るし、朝も日が登ってからまた来るから、夕食の盛り付けだけは自分達でな」
銀狼組はギルベルトがずっとアーサーの耳元で何かを囁き続けているので、おそらく話は何も聞こえていない。
一方で話している最中にすでにアルに絞殺されそうになっている香。
フェリとルークは互いに震えながら抱きあっていて、金竜組は相変わらず通常運転でお茶を飲んでいる。
3年寮長組はそんな4組の後輩達の様子をにやにやと楽しそうに観察していた。
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